学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

内部統制システムとは何ぞや

このブログでも何度か書いたことがありますが、内部統制システムに関するご相談がぼちぼち続いています。

とりあえず、文科省が公表している資料はこちら。↓
 「内部統制システムの整備について」

この資料によると、内部統制システムとは、

 「基本的に、その目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、
  業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセス」

のことをいうそうです。

難しい日本語ですね。
「その目的」とか「合理的な保証」とか、何を言っているのかよくわからないですね。

文科省の資料を参考に私なりに意訳すると、たぶんこんなことを言っています。

①効率的に業務を遂行できる仕組み、②計算書類を正確に作ることができる仕組み、 ③違法行為が起きないようにする仕組み、④法人財産が無駄遣いされないようにする仕組み、この4つの仕組みができていて、全教職員がこの4つの仕組みに従って仕事をしていること。

で、①をさらに意訳すると、「誰が何をやるか決まっていて、漏れや重複がない」と言い換えてもよさそうです。

改正法のもとでは、大臣所轄学校法人等では、この4つの仕組みを、理事会決議で整備しなければならないとされています。

おそらく、今年の3月末までに理事会決議を終えているはずですが、こういう仕組みは動かしながらブラッシュアップしていくものなので、整備してほったらかしというパターンに陥らないようにしたいですね。


執筆:弁護士 小國隆輔

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著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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(補足)意思表示書面でちょっとだけ出席

昨日の記事のように、第1号議案賛成、第2号議案反対、第3号議案空欄、という意思表示書面を提出した理事(Aさん)がいた場合、議事録の出席者の欄には、どう書けばいいのでしょうか。

私学法施行規則15条3項6号は、理事会に出席した理事の氏名を書くことを求めるだけで、書き方は特に決まっていません。
したがって、理事会の議事録には、Aさんの取扱いが分かれば、どのような記載でもOKです。

例えば、次のような記載でよいと思います。

  出席理事 B、C、D、E
  意思表示書面による出席理事 A(第1号議案、第2号議案のみ)

なお、欠席理事の氏名も書くのが多くの学校法人の実務ですが、必須の記載ではありません。
出席と書いてなければ欠席に決まってますしね。

もし欠席理事の氏名も記載したいということであれば、つぎのような記載が考えられます。

  出席理事 B、C、D、E
  意思表示書面による出席理事 A(第1号議案、第2号議案のみ)
  欠席理事 F、G、H、I、A(第1号議案、第2号議案を除く)

なんというか、もっとスマートな記載の仕方もありそうですが・・。
まあ分かればなんでもいいのです。


執筆:弁護士 小國隆輔

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意思表示書面でちょっとだけ出席

毎日暑いですね。。。
7月に入り、決算理事会やら定時評議員会やら役員の改正やらが一段落した頃合かと思います。

さて、本日は、理事会や評議員会に意思表示書面で出席した人の取扱いです。

対面で出席した人、オンライン会議で出席した人、事前に意思表示書面(議案に対する賛否の意思を記載した書面)を提出した人は、いずれも出席扱いです。
出席扱いというのは、定足数の判断においては出席者にカウントし、議案の可決・否決の判断においては賛成票又は反対票にカウントするということですね。

で、ときどき困るのが、意思表示書面に空欄がある場合です。

例えば、第1号議案には賛成、第2号議案には反対と書いているのに、第3号議案には賛否を書いていない場合です。

次のような理事会で考えてみましょう。
 ・理事定数は9名。
 ・ある理事会の日、4名が出席、4名が欠席、1名が意思表示書面を提出した。
 ・意思表示書面には、第1号議案は賛成、第2号議案は反対と記載されていたが、
  第3号議案に対する賛否は記載されていなかった。
 ※意思表示書面を提出した理事を、仮にAさんと呼ぶことにします。

前提として、出席・欠席は、議案ごとに判断します。

第1号議案と第2号議案については、Aさんは議案に対する賛否の意思を示しているので、出席者にカウントします。
理事定数9名、出席者が5名(対面出席4名+意思表示書面1名=5名)なので、過半数の出席を確保しており、定足数を満たします。

で、第1号議案と第2号議案のいずれも、対面出席者の2名が賛成、2名が反対したとしましょう。
第1号議案は、対面出席2名+Aさんで、3名が賛成です。出席者5名の過半数の賛成を得たので、可決ですね。
これに対し、第2号議案は、対面出席2名のみ賛成です。出席者5名の過半数の賛成がないので、否決ですね。

では、第3号議案はどうでしょうか。
理事定数9名なので、理事会の定足数は5名です。
Aさんは第3号議案に対して賛否の意思を表示していないので、出席者にカウントできません。
比ゆ的に言えば、第3号議案の審議に入る直前に退席して帰宅してしまったようなものです。
出席4名なので、定足数未達となり、第3号議案を審議することはできないこととなります。

ということで、この理事会の結果は、次のとおりです。
 第1号議案:可決
 第2号議案:否決
 第3号議案:審議できず

長々と書き連ねましたが、実際には、第3号議案への賛否を記載し忘れただけの可能性が高いので、事務局からAさんに連絡して、改めて意思表示書面を提出してもらうのがいいのでしょう。


執筆:弁護士 小國隆輔

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実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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役員報酬を無報酬にしてほしい

学校法人というのは不思議な組織で、それなりの規模があって、経営には相応の責任が伴うのに、無報酬の役員の方が珍しくありません。

職員兼務で、職員として給料が支払われている場合はそれほど不思議ではないのですが、外部から登用した役員が無報酬というのは、民間企業ではちょっと考えられないです。
教育事業を目的とする非営利法人という、学校法人の性質が表れる場面の一つかもしれません。

で、ここから法律のお話です。

ご存じのとおり、学校法人は、役員・評議員の報酬等の支給に関する基準を作成して、その基準に従って報酬等を支給しなければなりません(私学法100条)。
ときどき、報酬基準では役員・評議員に報酬を支払う旨を定めているのに、役員・評議員の方から、無報酬にしてほしいという申出を受けることがあります。

理由はいろいろですが、他に本業があって(会社員とか)、勤務先のルールで有償の副業が禁止されているというのは、よくありそうです。
了解可能な理由ですし、無報酬でいいなら学校法人側も助かるし、無報酬にしておきたいですよね。

ただ、報酬基準に、「非常勤の理事には、月額△△万円を支払う。」とか「非常勤の理事には、理事会の出席1回ごとに◇◇円を支払う。」とか定めていると、話がちょっとややこしくなります。
もう一度、私学法100条2項を読んでみましょう。


(役員及び評議員に対する報酬等)
第100条
2 学校法人は、前項の規定により定められた報酬等の支給の基準に従つて、その役員及び評議員に対する報酬等を支給しなければならない。


「支給することができる」ではなく、「支給しなければならない」ですね。
ということは、報酬基準で無報酬にするパターンを定めていなければ、無報酬にすることはできないというのが、素直な結論です。

ちょっと不合理な結論だよなー、と思ったので、松坂浩史『逐条解説私立学校法 四訂版』を確認してみました。
p643を見ると、「この支給の基準に従って支払わない場合には、支給の額が多い場合のみならず少ない場合にも本条に違反する行為となり、そのような支払いをした場合には法令違反として任務懈怠の責任を負うこととなる。」という解説がされていました。
私学法の条文に「支給しなければならない」と書かれているので、やむを得ない結論なのでしょう。

ということで、役員・評議員からの申出によって無報酬にすることがあり得るのであれば、報酬基準にも、「役員・評議員からの申出によって無報酬にすることがある」と書いておきましょう。


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執筆:弁護士 小國隆輔
事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
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