学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

補欠として選任された理事の任期

相変わらず寄附行為変更のご相談をたくさんお受けしているのですが、細部のツメに入ると、細かい疑問点が出てきますよね。

ときどきあるのが、「補欠として選任された理事」の任期です。

まず、改正法の条文を貼っておきましょう。第32条3項ですね。

(理事の任期)
 第32条
 3 第1項の規定は、寄附行為をもつて、任期の満了前に退任した
  理事の補欠として選任された理事の任期を当該退任した理事の
  任期の満了する時までとすることを妨げない。

「補欠として選任された理事」とは、前任者が任期途中で退任したときの後任者を指します。
改正法30条3項によってあらかじめ選任されていた「補欠の理事」だけでなく、単に前任者が任期途中で退任しただけの場合も含みます。

寄附行為に何も定めていなければ、このような後任者の任期は、前任者の任期を引き継ぐのではなく、自分自身の任期をゼロから数え始めます。
そうすると、任期途中の退任者が出るたびに理事の任期満了がバラバラになっていくので、任期の管理がちょっと面倒です。

そこで、補欠として選任された理事については、前任者の残任期を引き継がせれば、理事の任期満了がバラバラになりません。
どちらかというと、改正法32条3項に対応した寄附行為の条文を置き、理事の任期バラバラ事件が起きないようにする学校法人が多数派のようです。

では、寄附行為作成例の条文を見てみましょう。
第10条1項ですね。

 (理事の任期)
 第10条 理事の任期は、選任後4年以内に終了する会計年度のうち
  最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、
  任期の満了前に退任した理事の補欠として選任された理事の任期は、
  前任者の残任期間とすることができる。

但書が、改正法32条3項に対応する条文です。
この但書を置くことで、「補欠として選任された理事」については、①前任者の残任期を引き継ぐことも、②自分自身の任期を新たに設定することもできるようになります。

末尾の「することができる」を「する」に修正したらどうなりますか? というご質問をいただくこともあります。
素直に読めば、補欠として選任された理事の任期は、必ず前任者の残任期を引き継ぐ、という条文になるのでしょう。①の選択肢しかないということですね。
ただ、「する」に修正した条文の場合でも、“補欠ではなく、新たに選任した理事だ!” と言えば、新たな任期を設定できるような気がしなくもないです。この辺はよくわかりません。

そもそも、改正法32条3項の文言からは、後任の理事選任時に任意に①と②を選択できるような制度設計を許容しているのか、明確に読み取ることはできません。
個人的には、寄附行為が理事選任機関に与えた権限を超えるものではない(=寄附行為が定めたものより長い任期を設定する権限を与えるものではない)ので、寄附行為作成例のように「することができる」という定め方をすることで、理事選任機関が任意に①と②を選択できる、という結論でよいと思っています。


今日は細かい話でしたね…
要するに、寄附行為作成例10条1項と同じ条文を採用しておけば、とりあえず不便はないと言いたかったわけです。


執筆:弁護士 小國隆輔

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★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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某書籍の在庫

なんとなく某書籍のリンクを見ていたら、楽天ブックスでは品切れになっているようですね。
お買い上げありがとうございます。

出版社の直販サイトと、アマゾンには在庫があるようです。
楽天よりアマゾンの方が、物流センターの容量が大きかったりするんですかね…?

ということで、懲りずにいつもの宣伝を貼り付けておこうと思います。
本日は、宣伝だけでした。


執筆:弁護士 小國隆輔


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理事会を理事選任機関にしてもいいらしい(文科省説明資料)

本日も、7月8日付で更新された文科省説明資料を、ぽちぽちと読み込んでいます。
(そこ、暇人とか言わない)

説明資料の掲載場所はこちらです。↓
 ◎私立学校法の改正について(令和5年改正)

さて、本日気になるのは、p87のQA2です。
とりあえず貼り付けましょう。

 Q2:理事選任機関を理事会としたり、理事を学内選挙により選任したりする
 ことは可能か。【令和6年7月8日更新】
 A2:理事会を理事選任機関とすることも違法とは解されないことから可能
 です。ただし、Q1や今回の制度改正の趣旨を踏まえて適切に判断いただき
 たいと思います。
 また、理事の事実上の選任を学内選挙によることも可能ですが、解任する場合
 の責任主体が不明確になることがないよう、選挙結果を踏まえて理事選任機関
 である評議員会が選任するといった方法や、選挙の実施を含む選任に責任を
 持つ理事選任機関(名称としては、例えば理事選挙委員会などとすることも
 考えられます。)を置くなどの工夫が考えられます。

 Q2:理事選任機関を理事会としたり、理事を学内選挙により選任したりする
 ことは可能か。【令和6年7月8日更新】
 A2:理事会を理事選任機関とすることも違法とは解されないことから可能
 です。

大事なことだから、2回言いました。
これまで、文科省が公表する資料では、理事会を理事選任機関にしていいか?という問いに正面から答えるものはありませんでした。
解説動画などでも、改正法の趣旨を踏まえて適切にご判断を…というだけで、やっぱり正面から答えてはいただけませんでした。

個人的には、あちこちのセミナーや某書籍で、理事会を理事選任機関にすることも可能であると説明してきたので、ようやく文科省の説明資料にも書いてくれた、という感じです。
ちなみに、理事会を理事選任機関にする場合の留意点やメリット・デメリットは、某書籍のp76、p109、p502などに記載しています(宣伝)。

ところで、大臣所轄学校法人の寄附行為変更の認可申請の第1期受付は7月1日から始まって、7月8日に終わってます。
こんな大事なことを、認可申請の受付期間が終わってから言うなんて、ちょっとずるくないですか?


執筆:弁護士 小國隆輔


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文科省説明資料の更新(令和6年7月8日版)

文科省の説明資料が更新されたようですね。

掲載場所は、いつものページです。↓
 ◎私立学校法の改正について(令和5年改正)

前回の更新は令和6年6月14日付だったので、3週間余りで更新されたことになります。
私の記憶では、その前の更新は令和5年12月12日だったはずなので、今回の更新のスピーディーさが際立ちます。
前の更新を読み解く前に次の更新が来てしまった感がありますが、頑張って読み込みます。

ちなみに、最近よく売れていると噂の某書籍で「文科省説明資料」として参照しているのは令和5年12月12日版ですが、6月と7月の更新はQAの追加が主なもので、文科省の解釈の変更はないと見てよさそうです。


執筆:弁護士 小國隆輔


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手持ちの任期を全うしたい(寄附行為作成例附則4項)

本日は、寄附行為作成例の附則の話に戻ろうと思います。

いくつか前の記事で附則3項まで検討したので、附則4項です。
とりあえず、寄附行為作成例の条文を貼り付けておきましょう。

 4 この寄附行為の施行の際現に在任する役員又は評議員であって、
  私立学校法第31条、第46条及び第62条の資格及び構成を満たす
  ものの任期は、残任期間と同一の期間とする。ただし、当該期間の
  満了の時が令和9年度の定時評議員会の終結の時以後である場合は、
  当該終結の時までとする。

相変わらず、難しい日本語ですね。
ざっくりまとめると、附則4項の意味は、次のとおりです。

 対象者:令和7年4月1日午前0時に在任している役員と評議員
 内容:手持ちの任期を全うすることができる
 上限:令和9年度の定時評議員会終結時まで

順番に見ていきましょう。

まず、対象者は大丈夫ですね。
例によって、新法&新寄附行為施行時点で、現に在任している役員と評議員が対象の経過措置です。

経過措置の内容は、任期の取扱いに関するものです。
新法では、役員と評議員の任期満了日は、選任から何年か後の定時評議員会終結時で固定されます。
このルールは、現行法・現行寄附行為とは異なるので、新法・新寄附行為の下で、手持ちの任期をどう取り扱うか、決めておかないといけません。
で、新法が採用したのは、
  ①原則として手持ちの任期はそのまま生かしてよい
  ②ただし、手持ちの任期が令和9年度の定時評議員会終結時より
   後まである人は、令和9年度の定時評議員会終結時で退任する
というものです(新法附則3条)。
寄附行為作成例附則4項は、新法附則3条と同じ内容を定めるものですね。

学校法人からのご相談をお受けしていると、令和7年度の定時評議員会終結時をもって全役員・評議員にいったん退任してもらう方針のところがやや多数派のようですが、手持ちの任期を全うしてもらう方針のところも少なくありません。

どちらの方針が良いというわけではないので、実務的に支障の少ない方針を採用すればいいのだろうと思います。


役員・評議員の任期の取扱いについては、次の記事もご覧くださいませ。

 任期をちょっと伸ばしたい(寄附行為作成例附則3項)
 任期をちょっと縮めたい(寄附行為の附則)



執筆:弁護士 小國隆輔


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実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
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