学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

附則2項の続き(寄附行為作成例)

昨日に続いて、寄附行為作成例附則2項を見ていきます。

昨日と同じく、とりあえず、附則2項の条文を貼り付けましょう。

  2 この寄附行為の施行の際現に在任する役員及び評議員の
   定数、資格及び構成については、令和7年度の定時評議員
   会の終結の時までは、なお従前の例による。この場合にお
   いて、評議員のうちから、この寄附行為の定めるところに
   より選任された理事については、当該終結の時に、この法
   人と協議の上、理事又は評議員のいずれかを辞任しなけれ
   ばならない。

本日のお題は、第2文ですね。

改正法では、理事と評議員の兼任は全面禁止です。
しかし、現行法では、評議員理事を少なくとも1人は選任しなければならないので、理事と評議員を兼任する者が必ずいます。

ということは、どこかの時点までは、兼職者が必ずいなければならず、どこかの時点で、兼職を解消しなければなりません。
改正法の経過措置では、役員・評議員の構成に関する新ルールは令和7年定時評議員会終結時まで適用を猶予することとされています。
つまり、令和7年定時評議員会が終結した瞬間に、理事・評議員の兼職を解消することとなります。

兼職を解消する方法はいくつかあるのですが、わかりやすいのは、辞表を出してもらうことです。
辞表の内容は、次の3つのどれかです。
 「令和7年の定時評議員会終結時に、理事を辞任します」
 「令和7年の定時評議員会終結時に、評議員を辞任します」
 「令和7年の定時評議員会終結時に、理事と評議員を両方辞任します」

寄附行為作成例附則2項が、「理事又は評議員のいずれかを辞任しなければならない」と定めているのは、この辞表を出してくれ、という内容ですね。
法的には、寄附行為の附則に書いてあるからといって辞表の提出を強制することはできないのですが、理事や評議員の方にお願いしやすくなることは間違いないでしょう。
辞表を取りまとめる方針の学校法人では、寄附行為作成例附則2項第2文のような条文を、寄附行為の附則に置いておくことをお勧めします。

・・・ところで。
寄附行為作成例の附則2項をよく読むと、「評議員のうちから、この寄附行為の定めるところにより選任された理事については」と書かれています。
これ、普通に読んだら評議員理事(2号理事)を指す表現です。

実際には、2号理事以外の理事も評議員を兼職しているはずですが、この表現だと、2号理事以外の兼職者が対象外になってしまいます(少なくとも、そう読む余地を生じます)。
この部分は、端的に、「理事と評議員を兼ねる者については」とする方が良いと思います。

ちなみに、最近発売されたある書籍には、この辺の細かい注意点も書いてあるので、書籍もご覧いただけると喜びます。


執筆:弁護士 小國隆輔


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★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊


実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04


実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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役員・評議員の定数、資格及び構成(寄附行為作成例附則2項)

本日も、寄附行為作成例の附則の条文を見ていこうと思います。

とりあえず、附則2項の条文を貼り付けましょう。

  2 この寄附行為の施行の際現に在任する役員及び評議員の
   定数、資格及び構成については、令和7年度の定時評議員
   会の終結の時までは、なお従前の例による。この場合にお
   いて、評議員のうちから、この寄附行為の定めるところに
   より選任された理事については、当該終結の時に、この法
   人と協議の上、理事又は評議員のいずれかを辞任しなけれ
   ばならない。

まず、第1文から考えてみましょう。
改正法では、理事・監事・評議員の欠格事由が増えますし、特別利害関係人の就任制限のルールが追加されますし、理事と評議員の兼職が禁止されます。
また、評議員の最低数が、理事の2倍超から、理事より多ければいいというルールに変わります。

要するに、現在の理事・監事・評議員の構成のままだと、改正私学法に違反する可能性が高いわけですね。
改正法施行(令和7年4月1日午前0時)と同時に新ルールを適用すると、全学校法人で改正法違反状態になってしまいます。
そこで、改正法では、理事・監事・評議員の資格・構成に関する新ルールは、令和7年の定時評議員会終結時から適用するという経過措置が設けられています。
寄附行為作成例の附則2項の第1文は、この経過措置に沿った内容を定めるものです。

ちなみに、第1文には、「定数」という文字があります。
昨年11月版の寄附行為作成例にはなかった文字なのですが、その後の再改正で加筆されました。
ほとんどの学校法人で、理事や評議員の定数の変更(特に、評議員の定数削減)を予定されています。
この場合、定数に関する新寄附行為の条文を令和7年4月1日午前0時に適用すると、理事・評議員の定数オーバーが生じてしまいます。
令和7年定時評議員会で新しい理事・評議員の体制をスタートさせるのであれば、附則に「定数」の文字を追加して、定時評議員会終結までは現体制を継続させることとなります。
昨年11月版の寄附行為作成例をもとに寄附行為の改正作業を進めている学校法人では、附則に「定数」の文字があるか、要確認ですね。

長くなってしまったので、附則2項の第2文は、次の記事で考えてみようと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔


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著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
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附則1項(寄附行為作成例)

本日から、寄附行為作成例の附則の条文を見ていこうと思います。

まず、附則1項です。

  1 令和○年○月○日文部科学大臣認可のこの寄附行為
   は令和七年四月一日から施行する。ただし、会計監査
   人及び常勤監事に関する規定は、令和七年度の定時評
   議員会の終結の時から施行する。

新寄附行為の施行日は、原則として改正私学法の施行日と同じ日付です。
多くの場合、令和7年3月31日以前に所轄庁の認可を受けるので、「令和○年○月○日文部科学大臣認可のこの寄附行為は~」という文言が加わります。

後半の但書は、会計監査人や常勤監事を置く学校法人において、新寄附行為施行と同時に会計監査人の選任や常勤監事の選定をすることは事実上無理なので、最初の定時評議員会終結時までに選任・選定をすればよいというものです。
改正法の附則に定められた経過措置と同じ内容ですね。

新寄附行為の施行日は、寄附行為の変更をする際に必ず置かなければならない条文なので、附則1項本文は今回の改正でも必須の条文です。

これに対して、附則1項但書は、改正法の附則に定められた経過措置と全く同じ内容なので、新寄附行為に書いても書かなくても大丈夫です。
新寄附行為の附則に書いてなくても、改正法の経過措置が適用されるということですね。

附則1項は、わりと簡単な内容でしたね。
次の記事では、附則2項を見てみようと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔


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小國隆輔
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実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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附則とは?

改正私学法の施行まで1年を切ったということで、寄附行為変更のご相談が増えてきました。

ご相談をお受けするのは顧問契約や法務アドバイザーなどの契約が前提になるのですが、たくさんご相談をお受けしていると、順調に検討を進めていらっしゃるところと、そうでもないところに二極化し始めた印象があります。
理事選任機関や評議員の選任以外にも考えることが多いので、ぜひ早めにご対応いただきたいところです。

さて、寄附行為変更のご相談で最近多いのが、「附則に何を書けばいいのか?」というものです。
たしかに、寄附行為作成例の最後の方の「附則」「備考」を読んでも、いまいちよくわからんですよね。

附則に書く内容はいろいろあるのですが、代表的なものは次のとおりです。

①施行日
・・・これは簡単ですね。新しい寄附行為がいつから効力を持つのか、具体的な日付(多くの場合、令和7年4月1日)を附則に記載します。
施行日の前日までは、旧寄附行為を適用することになります。

②経過措置
・・・施行日の後も、しばらくの間、旧寄附行為を部分的に生かしておきたい場合、附則に経過措置を置きます。
今回の私学法改正は、法律の附則にたくさん経過措置があるので、これに合わせて、寄附行為の附則にも経過措置を置くことになります。

③その他
・・・今回の私学法改正に対応するために必要な附則は、おそらく、施行日と経過措置の2つです。
この2つ以外には、学校法人設立時の役員・評議員の氏名を附則に記載することや、学校・学部・学科の新設・廃止・再編などをしたときに、完成年度までの間の取扱いを記載することもあります。


附則についてざっくり説明すると、こんな感じです。
次回以降の記事で、寄附行為作成例の附則の使い方や修正の必要性などを考えてみます。

法律の附則についてもう少し詳しく知りたい!という方がいらっしゃったら、参議院法制局のサイトが参考になります。
リンクはこちら。↓

 参議院法制局 見落とせない附則


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★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊


実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04


実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]


執筆:弁護士 小國隆輔

書籍のカテゴリー

アマゾンとか楽天で書籍を購入するときに、ランキングを見たりしますよね。

ちょっと気になったので、自分の本のランキングを見てみたのですが、アマゾンでは、「学校教育ノンフィクション」に分類されてました。
フィクションでないことは間違いないですが、何か違うようながします。
ちなみに、このカテゴリーの上位には、『ちいかわハングル』とか『ポケモンずかんドリル』などが並んでました。
(ノンフィクションって、何だろう…。)

続いて、楽天ブックスを見てみると、 「人文・思想・社会>その他」に分類されてました。
「学校教育ノンフィクション」よりはしっくりきます。
ちなみに、このカテゴリーの本日の1位は、『診療点数早見表 2024年度版』でした。
たしかによく売れそうな本ですが、人文・思想・社会とは違うような気もします。

ということで、本日はつぶやきだけでした。
次回から、法律の記事に戻ります。


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著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊


実務 私立学校法
小國隆輔
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実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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執筆:弁護士 小國隆輔
事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
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