2022年4月1日から、成年年齢が18歳に引き下げられました。

18歳になればクレジットカードやマンションの賃貸借契約を単独で締結できるようになる、飲酒・喫煙は変わらず20歳から、競馬などのギャンブルも変わらず20歳からなど、いろいろな話題がありますが、この辺りはご存じのことと思います。

あまり注目されていないのですが、ここでは、高等学校において保護者がいなくなる、という問題を考えてみます。(中等教育学校の後期、高等専門学校なども同様です。)

学校教育法16条を見てみましょう。

 第16条 保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年
    後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に9年の
    普通教育を受けさせる義務を負う。

義務教育に関する条文ですが、「保護者」の定義に関する条文でもあります。
おおざっぱに言えば、保護者=親権者、と定められています。
子どもが成年に達すると、父母は親権者でなくなるため、同時に保護者でもなくなってしまう、ということです。

多くの学校では、退学や休学に関する規則に、「保護者の同意を得なければならない」「保護者と連名で届け出て校長の承認をなければならない」など、退学・休学には保護者の同意が必要である旨を定めています。
退学や休学は、在学契約の解消・変更という法律行為なので、未成年者が法律行為をする際には法定代理人(≒親権者)の同意を得なければならないという、民法の規定を反映させたものです。
同時に、高校生ぐらいの年代ではまだ十分な判断能力が備わっていないことから、退学や休学については、保護者とよく話し合って決めてほしいという、教育現場の考えも反映されています。

さて、成年年齢の引き下げに伴って、18歳の高校生には、保護者がいなくなってしまいます。
保護者がいない以上、保護者の同意がなくても、生徒自身の判断だけで、退学や休学ができることになりそうです。
この考え方は、成年者は単独で法律行為をなしうるという民法の規定には全く反しません。

ただ、授業料等の学費を支弁しているのは、生徒が18歳になった後も親でしょうし、親の知らないところで生徒が退学できてしまうのは、教育現場にとって大いに疑問を抱く結論でしょう。


ここからは私見ですが、成年年齢が引き下げられたからといって、18歳~19歳の判断能力が急に伸びることはありません。
生徒本人の判断能力を補う趣旨で、各校の規則で、退学・休学等には(保護者ではなく)父母等の同意が必要である旨を定めることは、法的にも許容されてよいように思います。

おそらく、2022年度以降も、退学・休学等には父母等の同意を要する扱いを続ける学校が多数派でしょう。
各校の規則を改正し、「保護者」の文言を、「父母」「保証人」「学費支弁者」などの文言に改めることで、従前の取扱いを継続することができるのではないか、と考えています。

執筆:弁護士 小國 隆輔