労働契約法18条1項の無期転換ルールには、2015年(平成27年)にも例外規定が追加されました。
根拠法は、同年4月1日施行の、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」です(以下、「特措法」といいます)。
特措法は、次の2つの例外を定めています。
◇高度専門職ルール(特措法8条1項)
→特定の長期プロジェクトに従事する高度専門職者は、そのプロジェクトに
従事している間は、最長10年間、無期転換が生じない
◇定年後再雇用者ルール(特措法8条2項)
→定年退職後再雇用者は、無期転換が生じない。
まず、高度専門職ルールから見ていきましょう。
このルールを適用されるためには、大要、次の要件を満たす必要があります。
・専門的知識、技術又は経験を持ち、その知識等を必要とする長期プロジェクトに
従事すること
→具体的には、博士号所持者、公認会計士・医師・歯科医師・獣医師・弁護士・
一級建築士等の資格所持者、特許発明者など、厚生労働大臣が定める基準に
該当する者(平成27年3月18日厚生労働省告示第67号)
・1年あたりの賃金額が1075万円以上であること(特措法施行規則1条)
・特措法に基づいて「第一種計画」を定めて、厚生労働大臣の認定を受ける
こと(特措法4条)
・その労働者を、第一種計画の対象としていること
・・・何というか、これ誰が使うの? というぐらい、ハードルの高い例外規定です。
5年を超えるような長期プロジェクトなんてそう頻繁に立ち上がるものではないですし、年収1075万円以上という金額も厳しい要件です。
当事務所でも、高度専門職ルールに関するご相談はとても少なく、使い勝手の良い制度とはいえないようです。
次に、定年後再雇用者ルールです。
こちらは、私学に限らず、民間企業でも広く利用されています。
前提として、定年に関するルールをおさらいしておきましょう。
根拠法は、高年齢者雇用安定法8条~9条です。
・定年の年齢は、60歳を下回ってはいけない。
・事業者は、60歳から65歳までの雇用確保措置を講じなければならない。
・雇用確保措置は、①定年年齢の引き上げ、②継続雇用制度、③定年制の廃止の
中から選ばなければならない。
実務的には、60歳定年を維持したうえで、65歳まで有期労働契約を締結・更新する継続雇用制度が主流です。
それはいいのですが、65歳を過ぎてからも有期労働契約で働きたい・働いてほしいという事例は、珍しくありません。
もし、60歳から有期労働契約を締結・更新し、65歳を超えても更新し続けると、労働契約法18条1項による無期転換が生じてしまいます。
定年後再雇用者ルールは、このような事態が起きないように設けられた例外規定です。
(そんなことは2013年時点でわかってたんだから、無期転換の立法化と同時に対応しておくべきだったと思うのですが…。)
定年後再雇用者ルールを利用するには、大要、次の要件を満たす必要があります。
・定年後再雇用者の特性に応じた雇用管理に関する措置についての
計画(第二種計画)を作成し、厚生労働大臣の認定を受けること
・定年退職した後、同じ事業主(グループ企業等も可)と有期労働契約を
締結していること
・その労働者を、第二種計画の対象としていること
気を付けたいのは、定年後再雇用者ルールを利用できるのは、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度によって、有期労働契約を締結した者だけ、という点です。
定年以外の理由で退職した場合や、他の会社等を定年退職した後、別の会社等で有期労働契約を締結した場合は、原則どおり、通算契約期間が5年を超えると無期転換を生じます。
例えば、次のような事例では、定年後再雇用者ルールを適用することはできません。
・公立学校を定年退職した元校長を、私立高校の校長として
有期労働契約で採用した場合
・国立大学を定年退職した元教授を、私立大学の特任教授として
有期労働契約で採用した場合
・早期退職制度に応募して退職した職員を、同じ学校法人が、
有期労働契約で採用した場合
労働契約法18条1項の無期転換ルールに対する例外規定のお話は、ここまでです。
ところで、労働契約法18条1項は、2013年(平成25年)4月1日に施行されました。
附則3項では、施行後8年を経過した時点で次の改正を検討する旨が定められていますが、現在のところ、附則3項に基づく改正の動きはないようです。
厚生労働省はとても忙しい役所ですし、働き方改革法やらコロナ対応やらで、それどころではなかったんでしょうね…。
執筆:弁護士 小國隆輔
根拠法は、同年4月1日施行の、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」です(以下、「特措法」といいます)。
特措法は、次の2つの例外を定めています。
◇高度専門職ルール(特措法8条1項)
→特定の長期プロジェクトに従事する高度専門職者は、そのプロジェクトに
従事している間は、最長10年間、無期転換が生じない
◇定年後再雇用者ルール(特措法8条2項)
→定年退職後再雇用者は、無期転換が生じない。
まず、高度専門職ルールから見ていきましょう。
このルールを適用されるためには、大要、次の要件を満たす必要があります。
・専門的知識、技術又は経験を持ち、その知識等を必要とする長期プロジェクトに
従事すること
→具体的には、博士号所持者、公認会計士・医師・歯科医師・獣医師・弁護士・
一級建築士等の資格所持者、特許発明者など、厚生労働大臣が定める基準に
該当する者(平成27年3月18日厚生労働省告示第67号)
・1年あたりの賃金額が1075万円以上であること(特措法施行規則1条)
・特措法に基づいて「第一種計画」を定めて、厚生労働大臣の認定を受ける
こと(特措法4条)
・その労働者を、第一種計画の対象としていること
・・・何というか、これ誰が使うの? というぐらい、ハードルの高い例外規定です。
5年を超えるような長期プロジェクトなんてそう頻繁に立ち上がるものではないですし、年収1075万円以上という金額も厳しい要件です。
当事務所でも、高度専門職ルールに関するご相談はとても少なく、使い勝手の良い制度とはいえないようです。
次に、定年後再雇用者ルールです。
こちらは、私学に限らず、民間企業でも広く利用されています。
前提として、定年に関するルールをおさらいしておきましょう。
根拠法は、高年齢者雇用安定法8条~9条です。
・定年の年齢は、60歳を下回ってはいけない。
・事業者は、60歳から65歳までの雇用確保措置を講じなければならない。
・雇用確保措置は、①定年年齢の引き上げ、②継続雇用制度、③定年制の廃止の
中から選ばなければならない。
実務的には、60歳定年を維持したうえで、65歳まで有期労働契約を締結・更新する継続雇用制度が主流です。
それはいいのですが、65歳を過ぎてからも有期労働契約で働きたい・働いてほしいという事例は、珍しくありません。
もし、60歳から有期労働契約を締結・更新し、65歳を超えても更新し続けると、労働契約法18条1項による無期転換が生じてしまいます。
定年後再雇用者ルールは、このような事態が起きないように設けられた例外規定です。
(そんなことは2013年時点でわかってたんだから、無期転換の立法化と同時に対応しておくべきだったと思うのですが…。)
定年後再雇用者ルールを利用するには、大要、次の要件を満たす必要があります。
・定年後再雇用者の特性に応じた雇用管理に関する措置についての
計画(第二種計画)を作成し、厚生労働大臣の認定を受けること
・定年退職した後、同じ事業主(グループ企業等も可)と有期労働契約を
締結していること
・その労働者を、第二種計画の対象としていること
気を付けたいのは、定年後再雇用者ルールを利用できるのは、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度によって、有期労働契約を締結した者だけ、という点です。
定年以外の理由で退職した場合や、他の会社等を定年退職した後、別の会社等で有期労働契約を締結した場合は、原則どおり、通算契約期間が5年を超えると無期転換を生じます。
例えば、次のような事例では、定年後再雇用者ルールを適用することはできません。
・公立学校を定年退職した元校長を、私立高校の校長として
有期労働契約で採用した場合
・国立大学を定年退職した元教授を、私立大学の特任教授として
有期労働契約で採用した場合
・早期退職制度に応募して退職した職員を、同じ学校法人が、
有期労働契約で採用した場合
労働契約法18条1項の無期転換ルールに対する例外規定のお話は、ここまでです。
ところで、労働契約法18条1項は、2013年(平成25年)4月1日に施行されました。
附則3項では、施行後8年を経過した時点で次の改正を検討する旨が定められていますが、現在のところ、附則3項に基づく改正の動きはないようです。
厚生労働省はとても忙しい役所ですし、働き方改革法やらコロナ対応やらで、それどころではなかったんでしょうね…。
執筆:弁護士 小國隆輔