和歌山県の私立高校で、教職員が授業をボイコットするストライキを行った、給与の未払いがあった、という報道が続いています。
また、学校法人の所轄庁である静岡県と和歌山県が共同で立ち入り調査を行ったという報道もありました。
普段、私学に対する所轄庁の調査権限を意識することは、あまりないと思います。
ということで、ちょっと整理してみましょう。
まず、私立学校と学校法人の所轄庁は、次のとおりです。(私立学校法4条)
◇私立学校の所轄庁
① 私立大学(短期大学を含む)、私立高等専門学校・・・文部科学大臣
② 上記以外の私立学校、私立専修学校、私立各種学校・・・都道府県知事
③ 幼保連携型認定こども園のうち、指定都市又は中核市の区域内にある
もの・・・指定都市又は中核市の市長
④ 学校法人以外の者が設置する幼稚園・・・都道府県知事
◇学校法人の所轄庁
① 私立大学(短期大学を含む)又は私立高等専門学校を設置する学校
法人・・・文部科学大臣
② 上記以外の私立学校のみを設置する学校法人(私立専修学校、私立各種
学校を設置するものを含む)・・・都道府県知事
③ 準学校法人(専修学校又は各種学校のみ設置する法人)・・・都道府県知事
お気づきのとおり、個々の設置校の所轄庁と、法人の所轄庁は、必ずしも一致しません。
例えば、東京都にある学校法人が、大阪府に私立高校を設置していると、学校法人の所轄庁は東京都知事、私立高校の所轄庁は大阪府知事、ということもあり得ます。
次に、所轄庁の調査権限です。
大きく分けて、私立学校法に基づくものと、私立学校振興助成法(以下、「助成法」といいます。)に基づくものがあります。
私立学校法63条は、所轄庁は、同法の施行に必要な範囲で、学校法人に対し、業務若しくは財産の状況の報告をさせること、学校法人の事務所等に立ち入って帳簿・書類等の検査をすることができると定めています。この立入検査の権限を、犯罪捜査のために用いることはできません。
助成法は、私学助成を受ける学校法人にのみ適用されます。実際には、ほとんどの学校法人に適用される法律です。
助成法12条1号は、私学助成に関し必要があると認める場合においては、所轄庁は、学校法人に対して、業務又は会計の状況に関する報告の徴求、学校法人の職員への質問、帳簿・書類その他の物件の検査を行うことができると定めています。
報道されている私立高校の事案では、学校法人は静岡県、私立高校は和歌山県にあるようです。
したがって、学校法人の所轄庁は静岡県知事、私立高校の所轄庁は和歌山県知事です。
静岡県が、私立学校法に基づいて学校法人の立入調査を行うことはわかりやすいのですが、和歌山県がどのような法的根拠で立入調査に加わったのか、報道ではよくわかりません。
あり得るとしたら、和歌山県に所在する私立高校に対する調査の一環で、学校法人の本部に立入調査をするという構成でしょうか。
ただ、私立高校の所轄庁(都道府県知事)が、他の都道府県に所在する学校法人の本部に立入調査を実施できるというのは、少々違和感を抱きます。
私立学校法63条がこのような立入調査を想定しているのか、条文の文言からはよくわかりません。
少なくとも明示的に禁じられてはいないのですが、罰則付きの調査権限ですから(私立学校法66条12号)、抑制的に行使されるべきような気もします。
執筆:弁護士 小國隆輔
また、学校法人の所轄庁である静岡県と和歌山県が共同で立ち入り調査を行ったという報道もありました。
普段、私学に対する所轄庁の調査権限を意識することは、あまりないと思います。
ということで、ちょっと整理してみましょう。
まず、私立学校と学校法人の所轄庁は、次のとおりです。(私立学校法4条)
◇私立学校の所轄庁
① 私立大学(短期大学を含む)、私立高等専門学校・・・文部科学大臣
② 上記以外の私立学校、私立専修学校、私立各種学校・・・都道府県知事
③ 幼保連携型認定こども園のうち、指定都市又は中核市の区域内にある
もの・・・指定都市又は中核市の市長
④ 学校法人以外の者が設置する幼稚園・・・都道府県知事
◇学校法人の所轄庁
① 私立大学(短期大学を含む)又は私立高等専門学校を設置する学校
法人・・・文部科学大臣
② 上記以外の私立学校のみを設置する学校法人(私立専修学校、私立各種
学校を設置するものを含む)・・・都道府県知事
③ 準学校法人(専修学校又は各種学校のみ設置する法人)・・・都道府県知事
お気づきのとおり、個々の設置校の所轄庁と、法人の所轄庁は、必ずしも一致しません。
例えば、東京都にある学校法人が、大阪府に私立高校を設置していると、学校法人の所轄庁は東京都知事、私立高校の所轄庁は大阪府知事、ということもあり得ます。
次に、所轄庁の調査権限です。
大きく分けて、私立学校法に基づくものと、私立学校振興助成法(以下、「助成法」といいます。)に基づくものがあります。
私立学校法63条は、所轄庁は、同法の施行に必要な範囲で、学校法人に対し、業務若しくは財産の状況の報告をさせること、学校法人の事務所等に立ち入って帳簿・書類等の検査をすることができると定めています。この立入検査の権限を、犯罪捜査のために用いることはできません。
助成法は、私学助成を受ける学校法人にのみ適用されます。実際には、ほとんどの学校法人に適用される法律です。
助成法12条1号は、私学助成に関し必要があると認める場合においては、所轄庁は、学校法人に対して、業務又は会計の状況に関する報告の徴求、学校法人の職員への質問、帳簿・書類その他の物件の検査を行うことができると定めています。
報道されている私立高校の事案では、学校法人は静岡県、私立高校は和歌山県にあるようです。
したがって、学校法人の所轄庁は静岡県知事、私立高校の所轄庁は和歌山県知事です。
静岡県が、私立学校法に基づいて学校法人の立入調査を行うことはわかりやすいのですが、和歌山県がどのような法的根拠で立入調査に加わったのか、報道ではよくわかりません。
あり得るとしたら、和歌山県に所在する私立高校に対する調査の一環で、学校法人の本部に立入調査をするという構成でしょうか。
ただ、私立高校の所轄庁(都道府県知事)が、他の都道府県に所在する学校法人の本部に立入調査を実施できるというのは、少々違和感を抱きます。
私立学校法63条がこのような立入調査を想定しているのか、条文の文言からはよくわかりません。
少なくとも明示的に禁じられてはいないのですが、罰則付きの調査権限ですから(私立学校法66条12号)、抑制的に行使されるべきような気もします。
執筆:弁護士 小國隆輔