昨晩から今朝にかけて、山形県と新潟県に大雨特別警報が発令されました。
大きな被害が出ないことを祈るばかりです。

さて、自然災害が発生したときや、そのおそれがあるときは、休校になることがあります。
意外と知られていないのですが、どのような場合に休校にするのか、法令では決まっていません。

自然災害による休校の根拠条文は、学校教育法施行規則63条です。小学校に関する条文ですが、中学校、高等学校等にも準用されています。
条文を確認してみましょう。

第63条 非常変災その他急迫の事情があるときは、校長は、臨時に授業を行わないことができる。この場合において、公立小学校についてはこの旨を当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会(公立大学法人の設置する小学校にあつては、当該公立大学法人の理事長)に報告しなければならない。


「非常変災その他急迫の事情」ですので、休校になるのは自然災害に限られません。
例えば、学校の敷地内で不発弾が見つかったとか、学校の近くで重大な犯罪が発生した場合などが、「その他急迫の事情」に当たります。

学校教育法施行規則63条は、「非常変災」の内容に言及していないので、どのような災害であれば休校にするのか、具体的な判断は個々の学校に任せる趣旨と考えられます。

学校によっては、どのような災害であれば休校にするのか、学則や内規等で決めていることもあります。
よく見かけるのは、暴風警報又は各種特別警報が出た場合に休校とする、というものです。
時折、暴風警報のみを対象とする学則等を見かけますが、少なくとも特別警報は加筆しておくべきでしょう。

注意したいのは、学校教育法施行規則63条は、校長の裁量で休校を決めることを想定している点です。
学則等に書いていない事情(暴風警報以外の警報、不発弾処理、不審者の校内侵入など)であっても、児童・生徒の安全にかかわる事態が発生した場合には、校長の判断で休校にすることができます。
学則等の文字に縛られて、児童・生徒の安全にかかわる判断が遅れないようにしたいものです。


なお、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症を理由にした休校は、学校教育法施行規則ではなく、学校保健安全法20条に基づいて行います。
(この辺の話は、拙著『新型コロナの学校法務』で整理しています。)
新型コロナの学校法務
小國 隆輔
中央経済社
2021-07-20



ということで、学校保健安全法の条文を見ておきましょう。

(臨時休業)
第20条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。

校長ではなく、「学校の設置者」が休校等の判断をすることとされています。
私立学校なら学校法人、国立学校なら国立大学法人、公立学校なら教育委員会又は公立大学法人が、判断権者ということですね。

実際には、校長の判断に委ねていることが多いと思いますが、感染症を理由とした休校を誰が決めることになっているのか、一度確認しておくとよいでしょう。


執筆:弁護士 小國隆輔

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