夏の甲子園、今年は東北地方初の優勝ということで大きな話題になっています。
ネット記事などを見ていると、高校野球の監督の給料はいくらか…といった無粋な記事も結構あるようですね。
今日は、「高校野球の監督の契約はどんな契約か」という、もっと無粋な話を考えてみようと思います。
もう少し広げると、「部活動の顧問はどんな契約か」という議論ですね。
公立と私立で異なるのですが、大きく分けると、次のような契約や任用の形がありえます。
【公立】
1-1 教諭(一般職の職員)が、部活動顧問として、監督になる
1-2 教諭が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
2-1 部活動指導員(非常勤職員など)が、部活動顧問として、監督になる
2-2 部活動指導員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
【私立】
3-1 専任教職員が、部活動顧問として、監督になる
3-2 専任教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
4-1 非専任の教職員が、部活動顧問として、監督になる
4-2 非専任の教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
5-1 業務委託契約で、部活動顧問兼監督業務を委託する
5-2 業務委託契約で、監督業務を委託する
・・・実にややこしいですね。
上記以外にも、いろいろな契約や任用の形があるかもしれません。
ポイントは、
①学校の職員としての地位があるか
→公立なら職員として任用しているか
私立なら雇用契約を締結しているか
②部活動顧問に任命しているか
の2つだろうと思います。
①の法律関係は、わりとシンプルです。
職員の地位があれば、地方公務員法や労働基準法などが適用されます。
要件を満たせば社会保険に入れるし、仕事中にケガをしたら、公務災害や労働災害として治療費等の補償を受けることができます。
また、校長等の指揮監督を受けて職務に従事することも、明確です。
これに対し、職員の地位がない場合、例えば業務委託の場合などは、業務内容・委託期間・報酬の計算式・傷病の取扱いなどを、契約書等で具体的に定めておく必要があります。
②は、実は法的にはよくわからない議論です。
学校教育法等は部活動顧問に全く言及していないので、そもそも「顧問」が何なのか、法的根拠は曖昧です。
実務的にも、必ずしも「顧問=監督」ではなく、複数の教職員が顧問と監督を分担していることは珍しくありません。
部活動の時間が労働時間かどうか定説がないことから、顧問の役割をはっきりさせにくいのが実情なのかもしれません。
ところで、平成29年4月1日の学校教育法施行規則改正で、「部活動指導員」という謎の概念が導入されました。
スポーツ庁の通知(平成29年3月14日付28ス庁第704号)では、学校職員の地位を持つことが前提のようにも見えますが、これ以外の契約(業務委託契約など)が排除されているのか、必ずしも明確ではありません。
部活動指導員の制度化は、部活動顧問の負担軽減が目的の一つといえます。
ただ、上記のスポーツ庁通知では、部活動指導員に顧問を任せる場合は、別途「当該部活動を担当する教諭等」を指定せよとも言っています。
えっと、それでは負担軽減にならないような……
また、多くの競技団体では、大会等の引率は教員が行うよう求めているので、この辺の整合性はどうなんだ? という気もします。
ここまで疑問ばかり書き散らかしてきましたが、私自身も、中学校から大学まで、どっぷり部活動をしていました。
部活動が学生・生徒の成長にとって有意義であることは疑いようがないですから、部活動顧問の法的地位を曖昧にしておくことが良いとは思えません。
学校教育法施行規則に「部活動指導員」を書き加えてお茶を濁すのではなく、顧問の職務を明確にするような改正をしてほしいものです(もっと言えば、設備費や人件費を賄えるだけの予算をつけてほしいものです)。
執筆:弁護士 小國隆輔
※個別のご依頼、法律顧問のご相談などは、当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームからどうぞ。
ネット記事などを見ていると、高校野球の監督の給料はいくらか…といった無粋な記事も結構あるようですね。
今日は、「高校野球の監督の契約はどんな契約か」という、もっと無粋な話を考えてみようと思います。
もう少し広げると、「部活動の顧問はどんな契約か」という議論ですね。
公立と私立で異なるのですが、大きく分けると、次のような契約や任用の形がありえます。
【公立】
1-1 教諭(一般職の職員)が、部活動顧問として、監督になる
1-2 教諭が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
2-1 部活動指導員(非常勤職員など)が、部活動顧問として、監督になる
2-2 部活動指導員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
【私立】
3-1 専任教職員が、部活動顧問として、監督になる
3-2 専任教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
4-1 非専任の教職員が、部活動顧問として、監督になる
4-2 非専任の教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
5-1 業務委託契約で、部活動顧問兼監督業務を委託する
5-2 業務委託契約で、監督業務を委託する
・・・実にややこしいですね。
上記以外にも、いろいろな契約や任用の形があるかもしれません。
ポイントは、
①学校の職員としての地位があるか
→公立なら職員として任用しているか
私立なら雇用契約を締結しているか
②部活動顧問に任命しているか
の2つだろうと思います。
①の法律関係は、わりとシンプルです。
職員の地位があれば、地方公務員法や労働基準法などが適用されます。
要件を満たせば社会保険に入れるし、仕事中にケガをしたら、公務災害や労働災害として治療費等の補償を受けることができます。
また、校長等の指揮監督を受けて職務に従事することも、明確です。
これに対し、職員の地位がない場合、例えば業務委託の場合などは、業務内容・委託期間・報酬の計算式・傷病の取扱いなどを、契約書等で具体的に定めておく必要があります。
②は、実は法的にはよくわからない議論です。
学校教育法等は部活動顧問に全く言及していないので、そもそも「顧問」が何なのか、法的根拠は曖昧です。
実務的にも、必ずしも「顧問=監督」ではなく、複数の教職員が顧問と監督を分担していることは珍しくありません。
部活動の時間が労働時間かどうか定説がないことから、顧問の役割をはっきりさせにくいのが実情なのかもしれません。
ところで、平成29年4月1日の学校教育法施行規則改正で、「部活動指導員」という謎の概念が導入されました。
スポーツ庁の通知(平成29年3月14日付28ス庁第704号)では、学校職員の地位を持つことが前提のようにも見えますが、これ以外の契約(業務委託契約など)が排除されているのか、必ずしも明確ではありません。
部活動指導員の制度化は、部活動顧問の負担軽減が目的の一つといえます。
ただ、上記のスポーツ庁通知では、部活動指導員に顧問を任せる場合は、別途「当該部活動を担当する教諭等」を指定せよとも言っています。
えっと、それでは負担軽減にならないような……
また、多くの競技団体では、大会等の引率は教員が行うよう求めているので、この辺の整合性はどうなんだ? という気もします。
ここまで疑問ばかり書き散らかしてきましたが、私自身も、中学校から大学まで、どっぷり部活動をしていました。
部活動が学生・生徒の成長にとって有意義であることは疑いようがないですから、部活動顧問の法的地位を曖昧にしておくことが良いとは思えません。
学校教育法施行規則に「部活動指導員」を書き加えてお茶を濁すのではなく、顧問の職務を明確にするような改正をしてほしいものです(もっと言えば、設備費や人件費を賄えるだけの予算をつけてほしいものです)。
執筆:弁護士 小國隆輔
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