本日は、傷病休職のお話です。
業務上の災害ではないケガや病気(私傷病)で仕事ができないときに、いきなり解雇は酷なので、解雇猶予措置として、一定期間勤務を免除する制度です。

社会保険(私学なら私学共済、公立なら公務員共済)に加入していれば、休職期間中無給となっても、傷病手当金を受け取れることがあります。

傷病休職の制度設計は、就業規則で比較的自由に決めることができます。
学校法人の就業規則では、次のような条文をよく見かけます。

(休職)
第××条 職員が次の各号のいずれかに該当するときは、当該職員の申請により、休職を命じることがある。
(1) 業務外の傷病による欠勤が継続して1か月に達したとき
(2) 略


実はこれ、とっても使いにくい条文で、悪用することもできてしまいます。

まず、この条文だと、傷病休職を命じるためには、「当該職員の申請」が必要です。
どんなに体調が悪くても、大けがをしていようとも、使用者である学校法人の判断だけでは、休職を発令することができません。

休職の発令は人事権の一環ですから、職員本人に決定権があるかのような定め方は、よくないですね。

次に、「欠勤が継続して1か月」という定め方も大問題です。
理由はよくわからないのですが、私学界隈では、傷病休職に至る前の欠勤期間中は、給与カットをしない取扱いが多いです。

そうすると、3週間ほど私傷病で欠勤して、2~3日出勤して、また3週間ほど欠勤して、また2~3日出勤して・・・(以下略)
というやり方で、月に数日の出勤でお給料を満額もらえる、という悪いことができてしまいます。

この他にも、2~3日出勤する代わりに年次有給休暇を取得すると、少なくとも形式的には欠勤を1か月継続したことにならず、やはり悪いことができてしまいそうです。

ということで、私傷病で勤務できない状態であれば、使用者の判断で、すぐに休職を発令できるようにしておくべきと思っています。

例えば、次のような条文がよろしいでしょう。

(休職)
第××条 職員が次の各号のいずれかに該当するときは、休職を命じることがある。
(1) 業務外の傷病により、勤務することができないとき
(2) 略

なんというか、シンプルな条文ですね。
何事も、シンプル・イズ・ベストということです。

長くなってしまったので、傷病休職については、別の記事でもう少し書いてみようと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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