本日も、傷病休職のお話です。

労働法の世界ではノーワーク・ノーペイが原則なので、傷病休職の期間中は、無給扱いで構いません。
が、私学の実務では、傷病休職期間中も、平常勤務時の2割を支給する取扱いが多く見られます。

これは、私学共済の加入資格との関係で、教職員に不利益がないよう配慮した取扱いです。
昔(平成27年10月より前)は、平常勤務時の2割以上の支給を受けていないと、私学共済の加入資格を失うというルールでした。
そうすると、国民年金・国民健康保険に自分で加入しなければならなかったので、それはさすがにひどかろうということで、2割支給にする私学が多かったということです。

ところが、平成27年10月に、年金一元化に伴って、この2割ルールが撤廃され、休職中に無給扱いでも、常用的な使用関係が認められるときは、加入資格を維持するという取扱いに変わりました。
月報私学2015年4月号の9ページで周知されています。

したがって、今では、無給の傷病休職だというだけで、私学共済から追い出されることはありません。
2割支給することで傷病手当金の受給額が減る(要するに学校法人の負担が増えるだけ)ことにもなるので、給与規程等を改正して2割支給を止める学校法人も増えてきました。

2割支給を無給に変更することは、労働条件の不利益変更に一応当たるのですが、その代わりに傷病手当金を満額受け取れるので、不利益変更が違法又は無効となることはないだろう、と思っています。


執筆:弁護士 小國隆輔

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