労務管理の実務に携わっていると、休職と休業の関係について悩むことがあります。
例えば、私傷病で休職中の労働者が、産前産後休業や育児休業を取得したいと申し出てきたら、どうなるでしょうか。
論理的にあり得る考え方は、おそらく3通りです。
A:本人からの申出によって、産休・育休に切り替わる
B:休職中に、産休・育休をとることはできない(労務管理的には休職のまま)
C:休職と産休・育休が重複する
検討のスタートは、休職制度の基礎知識です。
休職制度は、法律に根拠のある制度ではなく、就業規則等で任意に創設される制度でしたよね。
労基法や育児・介護休業法は、労働条件の最低基準を定めるものなので、これらの法律よりも労働者に不利な労働条件を、就業規則等で定めることはできません。
産休・育休は労働者の権利として法律に定められているので、就業規則等に基づく休職を理由に産休・育休をとれなくなるという運用は、労基法や育児・介護休業法より不利な労働条件になってしまいます。
この論点を正面から扱った裁判例は把握していないのですが、こういう細かい議論になると、実務的に頼りになるのは厚生労働省の通達です。
かなり古いものですが、次のようなQ&Aで、厚労省の解釈が示されています。(昭和25年6月16日付け基収第1526号)
Q [前略]法第65条第1項の休業の請求を行うためには就労していることが
前提要件とはならない法意と解してよいか。
A 見解のとおりである[以下略]
Qに記載されている「法第65条第1項の休業」は、産前産後休業のことです。
厚労省も、休職より産休が優先する、と考えているようです。
法律で定められた最低基準の休業という点では、育休も同じと考えるべきでしょう。
ということで、上記のA~Cのうち、Bは不正解ですね。
AとCは、どちらもあり得る運用ですが、Aの方がシンプルで良さそうです。
実務感覚だと、傷病休職によって既に労務提供を免除されているんだから、重ねて休業を認める必要はなかろう、と思いがちです。
うっかり法令違反の運用をしてしまわないよう、注意したいところです。
執筆:弁護士 小國隆輔
※個別のご依頼、法律顧問のご相談などは、当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームからどうぞ。
例えば、私傷病で休職中の労働者が、産前産後休業や育児休業を取得したいと申し出てきたら、どうなるでしょうか。
論理的にあり得る考え方は、おそらく3通りです。
A:本人からの申出によって、産休・育休に切り替わる
B:休職中に、産休・育休をとることはできない(労務管理的には休職のまま)
C:休職と産休・育休が重複する
検討のスタートは、休職制度の基礎知識です。
休職制度は、法律に根拠のある制度ではなく、就業規則等で任意に創設される制度でしたよね。
労基法や育児・介護休業法は、労働条件の最低基準を定めるものなので、これらの法律よりも労働者に不利な労働条件を、就業規則等で定めることはできません。
産休・育休は労働者の権利として法律に定められているので、就業規則等に基づく休職を理由に産休・育休をとれなくなるという運用は、労基法や育児・介護休業法より不利な労働条件になってしまいます。
この論点を正面から扱った裁判例は把握していないのですが、こういう細かい議論になると、実務的に頼りになるのは厚生労働省の通達です。
かなり古いものですが、次のようなQ&Aで、厚労省の解釈が示されています。(昭和25年6月16日付け基収第1526号)
Q [前略]法第65条第1項の休業の請求を行うためには就労していることが
前提要件とはならない法意と解してよいか。
A 見解のとおりである[以下略]
Qに記載されている「法第65条第1項の休業」は、産前産後休業のことです。
厚労省も、休職より産休が優先する、と考えているようです。
法律で定められた最低基準の休業という点では、育休も同じと考えるべきでしょう。
ということで、上記のA~Cのうち、Bは不正解ですね。
AとCは、どちらもあり得る運用ですが、Aの方がシンプルで良さそうです。
実務感覚だと、傷病休職によって既に労務提供を免除されているんだから、重ねて休業を認める必要はなかろう、と思いがちです。
うっかり法令違反の運用をしてしまわないよう、注意したいところです。
執筆:弁護士 小國隆輔
※個別のご依頼、法律顧問のご相談などは、当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームからどうぞ。