本日も、私立学校法の改正法案を、ぽちぽちと読み込んでいます。

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 ◎私立学校法の一部を改正する法律案


本日は、評議員による評議員会の招集請求のお話です。

現行法でも「理事長は、評議員総数の3分の1以上の評議員から会議に付議すべき事項を示して評議員会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から20日以内に、これを招集しなければならない」と定められています(現行法41条5項)。

ただ、理事長が招集請求を無視して評議員会を招集しなかった場合、評議員会は開催されないままで終わってしまいます。

改正法では、このような場合に、評議員が自ら評議員会を招集できるようになります。
根拠条文は、71条1項と72条1項です。

  第71条 評議員の総数の3分の1(これを下回る割合を寄附行為をもつて定めた場合に
     あつては、その割合)以上の評議員は、共同して、理事に対し、会議の目的である
     事項及び招集の理由を示して、評議員会の招集を請求することができる。

  第72条 前条第1項の規定による請求があつた日から20日以内の日を評議員会の日とする
     評議員会の招集の通知が発せられない場合には、同項の規定による請求をした評議員
     は、共同して、所轄庁の許可を得て、評議員会を招集することができる。


大臣所轄学校法人等では、71条1項の「評議員の総数の3分の1」は「評議員の総数の10分の1」となり、72条1項の「20日以内」は「30日以内」となります(147条)。

例えば、評議員会を理事選任機関としている場合に、評議員たちが「この理事を解任したい!」と思ったときに、評議員会の招集を担当する理事に、「理事だれそれには解任に相当する事由がある。よって、理事だれそれの解任を議題とする評議員会を招集せよ」と請求することが考えられます。
理事側がきちんと評議員会を招集しなかった場合、評議員たちは、所轄庁の許可を得られれば、自ら評議員会を招集することができます。

評議員たちが評議員会を招集する場合も、1週間前に招集通知を発することや、招集通知に記載すべき事項は、理事が招集する場合と同じです(72条3項、5項)。


実務上、評議員による評議員会の招集請求はあまり見ることがない手続きになると思います。
が、理事と評議員の兼職禁止・職員たる評議員の人数制限などによって、理事会と評議員会の間に意見の対立が生じる可能性は高まります。
理事会対評議員会という対立の構図がかたまってしまうと、招集請求が乱発されることがあるかもしれません。

理事も評議員も人間ですから、なんだかんだ言って信頼関係は大事ですね。


執筆:弁護士 小國隆輔

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