本日は、寄附行為作成例の附則の話に戻ろうと思います。

いくつか前の記事で附則3項まで検討したので、附則4項です。
とりあえず、寄附行為作成例の条文を貼り付けておきましょう。

 4 この寄附行為の施行の際現に在任する役員又は評議員であって、
  私立学校法第31条、第46条及び第62条の資格及び構成を満たす
  ものの任期は、残任期間と同一の期間とする。ただし、当該期間の
  満了の時が令和9年度の定時評議員会の終結の時以後である場合は、
  当該終結の時までとする。

相変わらず、難しい日本語ですね。
ざっくりまとめると、附則4項の意味は、次のとおりです。

 対象者:令和7年4月1日午前0時に在任している役員と評議員
 内容:手持ちの任期を全うすることができる
 上限:令和9年度の定時評議員会終結時まで

順番に見ていきましょう。

まず、対象者は大丈夫ですね。
例によって、新法&新寄附行為施行時点で、現に在任している役員と評議員が対象の経過措置です。

経過措置の内容は、任期の取扱いに関するものです。
新法では、役員と評議員の任期満了日は、選任から何年か後の定時評議員会終結時で固定されます。
このルールは、現行法・現行寄附行為とは異なるので、新法・新寄附行為の下で、手持ちの任期をどう取り扱うか、決めておかないといけません。
で、新法が採用したのは、
  ①原則として手持ちの任期はそのまま生かしてよい
  ②ただし、手持ちの任期が令和9年度の定時評議員会終結時より
   後まである人は、令和9年度の定時評議員会終結時で退任する
というものです(新法附則3条)。
寄附行為作成例附則4項は、新法附則3条と同じ内容を定めるものですね。

学校法人からのご相談をお受けしていると、令和7年度の定時評議員会終結時をもって全役員・評議員にいったん退任してもらう方針のところがやや多数派のようですが、手持ちの任期を全うしてもらう方針のところも少なくありません。

どちらの方針が良いというわけではないので、実務的に支障の少ない方針を採用すればいいのだろうと思います。


役員・評議員の任期の取扱いについては、次の記事もご覧くださいませ。

 任期をちょっと伸ばしたい(寄附行為作成例附則3項)
 任期をちょっと縮めたい(寄附行為の附則)



執筆:弁護士 小國隆輔


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