寄附行為変更の作業が一段落した学校法人の方から、「寄附行為施行細則って、何を書いたらいい?」「そもそも必要?」といったご相談を受けることが増えてきました。

法的な正解は簡単で、「何を書くかは自由」「必要なら作ればいいし、必要なければ作らなくてもいい」です。

学校法人の実務でよく見るのは、寄附行為に書いていることと同じ内容を、寄附行為施行細則にも書くパターンです。
例えば、「理事会は、理事長が招集する」とか、「計算書類等は理事会の承認を得なければならない」とかですね。

これ、意味ないです。
というか、百害あって一利なし、と思っています。

寄附行為と細則に同じ内容を書くと、今後寄附行為の変更をする際に、細則の変更も必要になり、作業量が増えます。
日常の業務でも、寄附行為と細則の両方を毎回見ないといけないので、無駄な作業が増えます。
さらに、何かのミスで寄附行為と細則の内容にズレが生じると、どちらに従えばいいのかわからなくなり、とても困ります。

中には、細則に次のような条文があれば便利じゃないか、というご意見もあるようです。

 第〇条 次の事項は、理事会の決議によって決定しなければならない。
 (1) 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事の選定及び解職
 (2) 重要な資産の処分及び譲受け
 (3) 多額の借財
 (4) 以下略

要するに、私学法や寄附行為のあちこちに散らばっている理事会決議事項を、細則にまとめておけば便利だ! ということですね。
でも、これを細則に定めると、両方見ないといけないとかズレが生じたらどうするんだとか、上記の不都合がまともに生じてしまいます。
一覧表があった方が便利だというのなら、事務局のマニュアルなどに一覧表を付けておけば済むので、わざわざ細則に定める必要はありません。

ということで、次回以降、ときどきお休みもしつつ、寄附行為施行細則や、それ以外の附属規程について、ぼちぼちと考えていこうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



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日本加除出版
2024-06-04



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