お盆休みも終わってしまい、当事務所も本日から通常業務に戻っております。

少し話題が遡りますが、寄附行為施行細則に、理事会の条文をもう少し追加してみます。
改正法によって、理事は、自己の職務執行の状況を定期的に理事会へ報告しなければなりません。
報告の頻度は、大臣所轄学校法人等では3か月以内ごと、それ以外の法人では毎年度2回以上とされています(改正法39条1項、146条1項)。

寄附行為作成例では、報告義務を履行するのは、理事長、代表業務執行理事、業務執行理事としています。

【大臣所轄学校法人等】
 (理事の報告義務)
 第17条 理事長〔、代表業務執行理事及び業務執行理事〕は、3月に1回以上、
  自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。

【大臣所轄学校法人等以外の法人】
 (理事の報告義務)
 第17条 理事長〔、代表業務執行理事及び業務執行理事〕は、毎会計年度に
  4月を超える間隔で2回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告し
  なければならない。

改正法と寄附行為作成例の条文から、報告の回数と頻度は分かりますが、誰が・何を・どうやって報告するのか、よくわかりません。
この辺りは法律にも作成例にも通達にも記載がないので、各学校法人の実情に合わせて、理事会の意思決定や理事の職務執行の監督に支障がない程度の情報が提供されていれば、とりあえず及第点なのでしょう。

何もルールがないと困るので、寄附行為施行細則に、次のような条文を置いてみてもよいと思います。

【大臣所轄学校法人等】

 (理事会の開催時期)
 第××条 理事会は、6月、9月、12月及び3月に定例として開催するほか、
  必要に応じて開催する。

 (理事からの報告)
 第××条 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事は、定例の理事会に
  おいて、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の報告には、予算の執行状況、学生募集の状況を含めるものとする。
 3 前各項に定めるもののほか、理事は、自己の職務の執行の状況について、
  適時に理事会へ報告しなければならない。
 4 理事は、前各項の報告を、当該職務を担当する職員に行わせることができる。

 (利益相反取引及び競業取引の報告)
 第××条 この法人との利益相反取引又は競業取引を行った理事は、遅滞なく、
  当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の取引が継続的なものであり、理事会から包括的な承認を受けていた
  場合、当該理事は、3月又は6月の定例の理事会において前項の報告をすれば
  足りるものとする。ただし、この法人に損害を及ぼすおそれがあるときは、
  この限りでない。


【大臣所轄学校法人等以外の法人】

 (理事会の開催時期)
 第××条 理事会は、6月及び3月に定例として開催するほか、必要に応じて
  開催する。

 (理事からの報告)
 第××条 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事は、定例の理事会に
  おいて、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の報告には、予算の執行状況、生徒募集の状況を含めるものとする。
 3 前各項に定めるもののほか、理事は、自己の職務の執行の状況について、
  適時に理事会へ報告しなければならない。
 4 理事は、前各項の報告を、当該職務を担当する職員に行わせることができる。

 (利益相反取引及び競業取引の報告)
 第××条 この法人との利益相反取引又は競業取引を行った理事は、遅滞なく、
  当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の取引が継続的なものであり、理事会から包括的な承認を受けていた
  場合、当該理事は、定例の理事会において前項の報告をすれば足りるものと
  する。ただし、この法人に損害を及ぼすおそれがあるときは、この限りでない。


ポイントになるのは、「前項の報告には、予算の執行状況、学生募集の状況を含めるものとする。」という記載でしょうか。
各学校法人の従前の理事会の議案や報告事項を参考に、「人事異動の状況」「内部統制システムの運用の状況」「事業計画(及び中期事業計画)の進捗の状況」「収益事業の状況」などを加えてもよいと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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2024-06-04



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