寄附行為変更のご相談と合わせて、内部統制システムの整備のご相談も増えてきました。
大臣所轄学校法人等限定ですが、内部統制システムを理事会決議によって整備しなければならないというやつです(改正法36条3項5号)。

内部統制システムについては、文科省が詳細かつわかりやすい資料を公表してくれています。
資料を見るときは、こちらのURLからどうぞ。↓
 内部統制システムの整備について (PDF:902KB)

内部統制システムは、もともと、会社法上の大会社で整備が義務付けられていました。
株式会社を前提に、金融庁が詳細な資料を作成しており、学校法人向けに少しアレンジしたものが、上記の文科省の資料です。

ちなみに、金融庁の作った詳細な資料の一つがこちらです。↓
 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準
内部統制とは何か、という難しい議論が書かれているので、興味のある方のみご覧くださいませ。


で、ここからが本題です。
内部統制システムの整備を理事会決議で・・・と言われても、何をしたらいいのかわからないですよね。
文科省の資料をヒントに考えてみましょう。

まず、内部統制とは、「基本的に、その目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいう」とのことで、要するに、「学校法人が、その活動を健全かつ効率的に運営するための仕組みのこと」らしいです。

次に、「その目的」とは、次の4つを指すそうです。
(1)業務の有効性及び効率性
 → 事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること
(2)報告の信頼性
 → 組織内及び組織の外部への報告(非財務情報を含む。)の信頼性を確保すること
(3)事業活動に関わる法令等の遵守
 → 事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進すること
(4)資産の保全
 → 資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ること

わかったようなわからんような、そんなお話ですね。

私なりにまとめると、次の4点がちゃんとできてますか、という議論のようです。
 ①誰が何をやるか、ちゃんと決まっている
 ②計算書類や事業報告が、正確に作られている
 ③不正行為が起きないような仕組みや、不正行為を発見できるような仕組みがある
 ④学校法人の財産が無駄遣いされない仕組みができている

この①~④が、学内の規則で決められていて、主要な規則が理事会決議で制定されているのであれば、とりあえず及第点です。
一般的な規則の名称を並べると、こんな感じです。
 ・理事選任機関運営規程、常任理事会設置規程
 ・組織規程、職務分掌規程、決裁権限規程、経理規程
 ・監事監査規程、内部監査規程、公益通報規程
 
顧問弁護士をやっていて気になるのですが、学校法人が訴えられたときに、訴訟対応をする部署が決まらずに初動が遅れることがあります。
学生や卒業生からの訴状が届くと、学部事務室、総務、庶務、法人事務室、理事長室などに窓口が割れてしまい、弁護士のところへ必要な情報が届かない(又は不要な情報がやたら届く)ことで、十分に訴訟活動を行うことができなくなります。

誰が処理するか決まっていない事項が多いと、頻繁にこういうことが起きるので、学校法人を効率よく運営することができません。
こういう事態を防ぐために、内部統制システムの整備が必要なのだろうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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発刊年月:2024年5月刊



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2024-06-04



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