学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

私立学校法

寄附行為施行細則の改廃権限(意外と重要)

学内にたくさんある諸規程は、必ず、誰かの権限に基づいて作成されています。
寄附行為であれば、評議員会の意見聴取or決議+理事会決議(+所轄庁の認可)ですし、就業規則などの重要な規程は理事会決議のことが多いですね。

では、寄附行為施行細則はどうでしょう。

理事会決議事項にせんといかんとか、評議員会の意見聴取が必要だとか、私学法にそういったルールはありません。

ただ、寄附行為作成例では、新旧どちらにおいても、施行細則の制定は理事会決議で行う旨が定められています(旧47条、新78条)。
これに合わせて、寄附行為施行細則にも、次のような条文を置くことが一般的です。

 (改廃)
 第××条 この細則の改廃は、理事会の決議によって行う。

ところが、学校法人によっては、寄附行為施行細則の改廃権限が、理事会以外に属していることがあります。
「この規則の改廃は、理事会の決議を経て理事長が行う」「この規則の改廃は、常任理事会の決議によって行い、理事会に報告する」といった内容です。

「理事会の決議を経て理事長が行う」だと、理事長が改廃の拒否権を持つという解釈が可能ですし、「常任理事会の決議によって行い、理事会に報告する」だと、そもそも理事会決議が欠けています。
このような条文を施行細則に置いてしまい、実際にこのような手続きで施行細則の改正等を行うと、施行細則全体が法的に無効となりかねません。

学内規程を整備する際に、最後の方に置かれる改廃の条文は、他の規程からコピペしてしまいがちです。
が、実はとても大事な条文なので、寄附行為などの上位規程と矛盾が生じないように注意しなければなりません。
諸規程整備は、最後まで気を抜けないということですね。


ところで、先月後半ぐらいからこのブログの訪問者が急に増えたのですが、何かあったんですかね…?
昨日の『法律・法学』分野のブログランキングでは、なぜか2位になっていたようです。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

評議員を選挙で選びたい。

昨日は、学長・校長・理事・理事長の選挙について考えてみました。
本日は、評議員の選挙について考えてみたいと思います。

改正法61条1項は、評議員の選任方法について、寄附行為をもって定めるとだけ規定しています。
理事会決議でしか選任・選定できない学長・校長・理事長、理事選任機関による選任手続が必須である理事とは大きく異なります。

改正法の条文を素直に読めば、評議員については、選挙で選任することも許されそうです。
例えば、職員である評議員は、専任教職員による選挙で選任するとか、設置校ごとに1人ずつ評議員の枠を設けて、各学校の教職員による選挙で選任するとか、同窓会組織で選挙をしてもらうとか、色々なパターンが考えられそうです。

ただ、選任方法について考えるときは、解任方法についても考えておく必要があります。

評議員の解任について、改正法64条は、寄附行為で定めるとしか規定していません。
寄附行為作成例では、当該評議員を選任したものが解任権を持つとされており、ほとんどの学校法人がこれに倣った条文を寄附行為に置いています。

評議員の選任を選挙だけでやってしまうと、その評議員が不祥事を起こした場合などに、誰が解任するのかわからなくなってしまいます。
評議員の解任選挙なんてやっていると、重大な不祥事を起こした評議員を即時解任することができません。

結局のところ、理事会・評議員会・第三者機関などが評議員の選任権と解任権を持つことにして、選挙結果を参酌して選任する、得票数上位〇名から選任する、といった枠組みが妥当なのだろうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

学長、校長、理事、理事長を選挙で選びたい。

個人的にバタバタしており、ブログの更新をさぼってました。
しばらくの間、更新が不規則になりそうですが、引き続きお付き合いくださいませ。

最近、世間では総裁選挙だか代表選挙だかで盛り上がっていますね。
50歳前後の人々が若手扱いされているあたり、この国って大丈夫なんでしょうか。

それはさておき、学校法人でも、学長、校長、理事、理事長などを選挙で選んでいるところがあります。
改正法のもとで、学長、校長、理事、理事長を選挙で選ぶことは可能でしょうか。

まず、学長・校長から。
改正法36条3項3号で、「校長その他の重要な役割を担う職員の選任」は理事会決議事項とされています。
つまり、選挙で当選した人が学長・校長になる、という枠組みは、私学法違反です。
どうしても選挙をしたければ、理事会は選挙結果を参酌して学長・校長を選任する、といったあたりが限界でしょう。

では、理事はどうでしょうか。
改正法30条1項を見ると、理事選任機関による選任以外に、理事を選任する手段はありません。
つまり、選挙で当選しただけで理事に選任されるという枠組みは、私学法違反です。
どうしても選挙をしたければ、理事会・評議員会・第三者機関などを理事選任機関としたうえで、理事選任機関は選挙結果を参酌して理事を選任するとか、得票数上位〇名のうちから理事を選任する、といった枠組みにする必要があります。

最後に、理事長はどうでしょうか。
改正法37条1項は、理事長は、「寄附行為をもつて定めるところにより、理事のうちから、理事会が選定する。」と定めています。
理事会決議で理事長を選定するので、理事を選挙権者とする選挙(要するに投票による採決)をすることは、おそらく可能です。

巷では、多人数による投票で決めることが民主的である、という議論もあるようですが、学校法人内の役職を決める手続きが民主的であればよいというのは、論理必然ではありません。
学長・校長・理事・理事長は、学校法人運営のために適材適所の人選をすべきという場面です。
納税者が、自分たちの税金の使途を決める者を自分たちで選ぶ、という場面とは異なる点は、意識されてもいいように思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

内部統制システムって、何をすればいいの?

寄附行為変更のご相談と合わせて、内部統制システムの整備のご相談も増えてきました。
大臣所轄学校法人等限定ですが、内部統制システムを理事会決議によって整備しなければならないというやつです(改正法36条3項5号)。

内部統制システムについては、文科省が詳細かつわかりやすい資料を公表してくれています。
資料を見るときは、こちらのURLからどうぞ。↓
 内部統制システムの整備について (PDF:902KB)

内部統制システムは、もともと、会社法上の大会社で整備が義務付けられていました。
株式会社を前提に、金融庁が詳細な資料を作成しており、学校法人向けに少しアレンジしたものが、上記の文科省の資料です。

ちなみに、金融庁の作った詳細な資料の一つがこちらです。↓
 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準
内部統制とは何か、という難しい議論が書かれているので、興味のある方のみご覧くださいませ。


で、ここからが本題です。
内部統制システムの整備を理事会決議で・・・と言われても、何をしたらいいのかわからないですよね。
文科省の資料をヒントに考えてみましょう。

まず、内部統制とは、「基本的に、その目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいう」とのことで、要するに、「学校法人が、その活動を健全かつ効率的に運営するための仕組みのこと」らしいです。

次に、「その目的」とは、次の4つを指すそうです。
(1)業務の有効性及び効率性
 → 事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めること
(2)報告の信頼性
 → 組織内及び組織の外部への報告(非財務情報を含む。)の信頼性を確保すること
(3)事業活動に関わる法令等の遵守
 → 事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進すること
(4)資産の保全
 → 資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ること

わかったようなわからんような、そんなお話ですね。

私なりにまとめると、次の4点がちゃんとできてますか、という議論のようです。
 ①誰が何をやるか、ちゃんと決まっている
 ②計算書類や事業報告が、正確に作られている
 ③不正行為が起きないような仕組みや、不正行為を発見できるような仕組みがある
 ④学校法人の財産が無駄遣いされない仕組みができている

この①~④が、学内の規則で決められていて、主要な規則が理事会決議で制定されているのであれば、とりあえず及第点です。
一般的な規則の名称を並べると、こんな感じです。
 ・理事選任機関運営規程、常任理事会設置規程
 ・組織規程、職務分掌規程、決裁権限規程、経理規程
 ・監事監査規程、内部監査規程、公益通報規程
 
顧問弁護士をやっていて気になるのですが、学校法人が訴えられたときに、訴訟対応をする部署が決まらずに初動が遅れることがあります。
学生や卒業生からの訴状が届くと、学部事務室、総務、庶務、法人事務室、理事長室などに窓口が割れてしまい、弁護士のところへ必要な情報が届かない(又は不要な情報がやたら届く)ことで、十分に訴訟活動を行うことができなくなります。

誰が処理するか決まっていない事項が多いと、頻繁にこういうことが起きるので、学校法人を効率よく運営することができません。
こういう事態を防ぐために、内部統制システムの整備が必要なのだろうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

理事会への報告(寄附行為施行細則)

お盆休みも終わってしまい、当事務所も本日から通常業務に戻っております。

少し話題が遡りますが、寄附行為施行細則に、理事会の条文をもう少し追加してみます。
改正法によって、理事は、自己の職務執行の状況を定期的に理事会へ報告しなければなりません。
報告の頻度は、大臣所轄学校法人等では3か月以内ごと、それ以外の法人では毎年度2回以上とされています(改正法39条1項、146条1項)。

寄附行為作成例では、報告義務を履行するのは、理事長、代表業務執行理事、業務執行理事としています。

【大臣所轄学校法人等】
 (理事の報告義務)
 第17条 理事長〔、代表業務執行理事及び業務執行理事〕は、3月に1回以上、
  自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。

【大臣所轄学校法人等以外の法人】
 (理事の報告義務)
 第17条 理事長〔、代表業務執行理事及び業務執行理事〕は、毎会計年度に
  4月を超える間隔で2回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告し
  なければならない。

改正法と寄附行為作成例の条文から、報告の回数と頻度は分かりますが、誰が・何を・どうやって報告するのか、よくわかりません。
この辺りは法律にも作成例にも通達にも記載がないので、各学校法人の実情に合わせて、理事会の意思決定や理事の職務執行の監督に支障がない程度の情報が提供されていれば、とりあえず及第点なのでしょう。

何もルールがないと困るので、寄附行為施行細則に、次のような条文を置いてみてもよいと思います。

【大臣所轄学校法人等】

 (理事会の開催時期)
 第××条 理事会は、6月、9月、12月及び3月に定例として開催するほか、
  必要に応じて開催する。

 (理事からの報告)
 第××条 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事は、定例の理事会に
  おいて、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の報告には、予算の執行状況、学生募集の状況を含めるものとする。
 3 前各項に定めるもののほか、理事は、自己の職務の執行の状況について、
  適時に理事会へ報告しなければならない。
 4 理事は、前各項の報告を、当該職務を担当する職員に行わせることができる。

 (利益相反取引及び競業取引の報告)
 第××条 この法人との利益相反取引又は競業取引を行った理事は、遅滞なく、
  当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の取引が継続的なものであり、理事会から包括的な承認を受けていた
  場合、当該理事は、3月又は6月の定例の理事会において前項の報告をすれば
  足りるものとする。ただし、この法人に損害を及ぼすおそれがあるときは、
  この限りでない。


【大臣所轄学校法人等以外の法人】

 (理事会の開催時期)
 第××条 理事会は、6月及び3月に定例として開催するほか、必要に応じて
  開催する。

 (理事からの報告)
 第××条 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事は、定例の理事会に
  おいて、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の報告には、予算の執行状況、生徒募集の状況を含めるものとする。
 3 前各項に定めるもののほか、理事は、自己の職務の執行の状況について、
  適時に理事会へ報告しなければならない。
 4 理事は、前各項の報告を、当該職務を担当する職員に行わせることができる。

 (利益相反取引及び競業取引の報告)
 第××条 この法人との利益相反取引又は競業取引を行った理事は、遅滞なく、
  当該取引についての重要な事実を理事会に報告しなければならない。
 2 前項の取引が継続的なものであり、理事会から包括的な承認を受けていた
  場合、当該理事は、定例の理事会において前項の報告をすれば足りるものと
  する。ただし、この法人に損害を及ぼすおそれがあるときは、この限りでない。


ポイントになるのは、「前項の報告には、予算の執行状況、学生募集の状況を含めるものとする。」という記載でしょうか。
各学校法人の従前の理事会の議案や報告事項を参考に、「人事異動の状況」「内部統制システムの運用の状況」「事業計画(及び中期事業計画)の進捗の状況」「収益事業の状況」などを加えてもよいと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

議長のお仕事(評議員会ver.)

少し前に、理事会の議長のお仕事を寄附行為施行細則に定めました。
本日は、評議員会の議長について細則に定めてみようと思います。
理事会の議長とほとんど同じですが、細かいところでちょいちょい相違点があります。

あ、少し前の記事とやらはこちらです。↓
 議長のお仕事の詳細(寄附行為施行細則)

とりあえず、評議員会の議長について必要そうな条文を並べてみましょう。

 (議長の互選)
 第××条 寄附行為第46条による議長の互選は、挙手又は投票のほか、出席
  評議員が推薦し、他の出席評議員に異議がないことを問う方法によって行う。
 (議長の職務)
 第××条 議長は、評議員会を主宰し、その議事進行を行う。
 (開会及び閉会等)
 第××条 議長は、出席評議員(オンライン会議による出席者又は書面若しくは
  電磁的方法による出席者を含む。)の人数が、寄附行為第××条の定足数を
  充足していることを確認しなければならない。
 2 評議員会は、議長の開会宣言によって開始し、閉会宣言によって終了する。
 3 議長は、必要に応じ、評議員会の途中で休憩を設けることができる。
 (延期又は続行)
 第××条 評議員会の延期又は続行の決議をしたときは、議長は、延期又は続行後の
  会議の日時及び場所を議事録に記載しなければならない。
 (議案)
 第××条 評議員会の議題に対する議案は、理事が提出する。
 2 私立学校法75条第1項に基づいて評議員が議案を提出しようとする
  ときは、議長は、評議員総数の3分の1以上が共同して行っていることを
  確認し、議事録にその氏名を記載しなければならない。
   ※大臣所轄学校法人等においては、「3分の1」を「10分の1」にする
 3 議案の提出者は、議案の趣旨及び内容を説明しなければならない。この
  説明は、当該議案を担当する部署の職員に行わせることができる。
 (出席者の発言)
 第××条 評議員会の出席者が発言するときは、議長の許可を得なければならない。

だいたいこんなところですかね。。。
他に必要な条文があれば、ときどき加筆するかもしれません。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

評議員会の招集(寄附行為施行細則)

本日は、評議員会の招集について、寄附行為施行細則に定めてみようと思います。

まず、寄附行為作成例42条を確認しておきます。
2項と3項は評議員による招集請求等の条文なので、本日は割愛です。

 (招集)
 第42条 評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事会の
   決議に基づき理事長が招集する。
  2~3 略
  4 評議員会を招集する場合には、理事会において、次に掲げる
   事項を定め、評議員に対し、書面又は電磁的方法(評議員の承諾を
   得た場合に限る。)により通知しなければならない。
   一 会議の日時及び場所
   二 会議の目的である事項があるときは、当該事項
   三 会議の目的である事項に係る議案(当該目的である事項が議案と
    なるものを除く。)について、議案が確定しているときはその概要、
    議案が確定していないときはその旨
   四 私立学校法施行規則で定める事項
  5 前項の通知は、会議の1週間前までに発しなければならない。

理事会の招集の条文(作成例18条)と比べると、理事長が欠けたとき又は理事長に事故があるときの取扱いが定められていません。
このような場合に評議員会を開きたいのであれば、各理事が理事会を招集し、理事会で新しい理事長を選定して、新理事長が評議員会を招集することとなります。

評議員会の招集について寄附行為施行細則に定めるべき内容は、理事会の招集とあまり変わりません。
例えば、次のような条文を置いておけばよいのだろうと思います。

 (評議員会の招集)
  第××条 評議員会の招集は、次のいずれかの方法で通知するものとする。
   ただし、第2号及び第3号の方法は、当該評議員が書面又は情報通信技術を
   利用した方法で承諾した場合に限り用いることができる。
   (1) 文書を交付又は送付する方法
   (2) pdfファイルを電子メールで送信する方法
   (3) △△クラウドにアップロードしたpdfファイルを各理事が
     ダウンロードする方法
  2 前項第2号及び第3号のpdfファイルは、印刷できる設定にしなければ
   ならない。
  3 評議員は、第1項但書の承諾を、いつでも、書面又は情報通信技術を
   利用した方法によって撤回することができる。
  4 寄附行為第42条第5項の「会議の1週間前まで」とは、招集通知を発した
   日と会議の日の間に、7日以上あることをいうものとする。
  5 前各項の規定は、寄附行為第43条第1項又は第44条第1項に基づき、
   評議員又は監事が評議員会を招集する場合に準用する。

細かい話ばかりですが、理事会の招集と異なる点は、次のとおりです。
 ・評議員に対して電磁的方法で招集を通知するには、個別に承諾を得る
  ことが必要(第1項但書)
 ・評議員は、その承諾をいつでも撤回することができる(第3項)
 ・評議員又は監事が招集する場合のフォローが必要(第5項)

ちなみに、「情報通信技術を利用した方法」は、要するに電磁的方法と同じです。
法令用語に合わせて「情報通信技術を利用した方法」と記載しましたが、細則の表記は「電磁的方法」に統一しても構いません。

あとはお好みですが、評議員会の招集が理事会決議事項となったことに対応して、次のような条文を置いてもよいと思います。

 (評議員会の招集に係る理事会の決議)
  第××条 理事会決議によって評議員会の招集を決定した後、次の事項に
   変更があった場合、再度理事会で決議しなければならない。
   (1) 会議の日時及び場所
   (2) 会議の目的である事項
   (3) 会議の目的である事項に係る議案が確定していたときは、当該議案
   (4) 私立学校法施行規則第20条各号に定める事項

だいぶ長くなってきたので、本日の記事はここまでにしようと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

理事会の運営(寄附行為施行細則)

本日は、理事会の運営の諸々を、寄附行為施行細則に定めてみます。

理事会に関する寄附行為作成例の条文は、13条、14条、18条~22条あたりです。
※寄附行為作成例の全文は、こちらからどうぞ。↓
寄附行為作成例(文部科学大臣所轄学校法人向け)(令和6年3月5日大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)決定)

何をどのぐらい書くか、特に決まり事はありません。
理事会を担当する事務局で、必要と思うものを書いておきましょう。

議長に関する事項招集に関する事項決議要件に関する事項はこれまでの記事で書いたので、その他諸々の条文を考えてみました。


(オンライン会議)
第××条 理事又は監事がオンライン会議の方法で出席するときは、△△△△
 又は○○○○を用いるものとする。
2 オンライン会議で出席する者がいるときは、会議の開始時に、次の
 事項を確認しなければならない。
 (1) 当該出席者の所在場所
 (2) 出席者の画像と音声が即時に他の出席者に伝わり、互いに適時的確に
  意見を表明できる状態であること
※「△△△△又は○○○○」には、アプリケーション名を記入。

(書面又は電磁的方法による意思表示)
第××条 寄附行為第20条第4項の定めによって議決に加わる理事は、各議案に
 対する賛否を、書面又は電磁的方法によって、会議の開始前に理事会に通知
 しなければならない。

(傍聴)
第××条 理事会は、公開しない。ただし、議長が許可した者に限り、傍聴
 することができる。
2 前項但書の傍聴者は、議長の指示に従わなければならない。
3 議長は、いつでも、第1項但書の許可を取り消し、傍聴者を退席させる
 ことができる。

(同席)
第××条 理事会には、議案の説明その他必要があるときは、学園の職員、
 学外の有識者その他必要な者を同席させることができる。
2 前項の同席の可否は、議長が決するものとする。
3 議長は、いつでも、同席者を退席させることができる。


だいたいこんなところですかね…。
思いついたら、また条文を追加していこうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

白票の取扱い(補足)

一昨日の記事で、理事会決議の際の白票について少し言及しましたが、もう少し詳しく考えてみたいと思います。

一昨日の記事というのは、こいつです。↓
 理事会の決議要件(寄附行為施行細則)

わかりやすくするために、具体的な事例を作っておきましょう。

【事例】
・現任の理事総数・・・15人
・理事会に出席した理事の人数・・・8人
・投票の結果・・・賛成4、反対3、白票1

欠席者がちょっと多い気がしますが、気にせず元気にいきましょう。
この事例の理事会決議は、可決となるでしょうか、否決となるでしょうか。
それとも、そもそも決議自体が不成立となるでしょうか。

いくつかの考え方があり得ます。

◇A説:白票は、出席者にカウントしない。
◇B説:白票は、出席者にカウントするが、投票者にはカウントしない。
◇C説:白票は、出席者にカウントし、投票者にもカウントし、賛成票にはカウントしない。

A説は、定足数を判断するときに欠席者扱いするという考え方です。
上記の【事例】だと、出席者が7人となるので、定足数未達となります。
つまり、可決・否決の判断以前に、理事会決議自体が不成立です。
(法的には、理事会決議が不存在である、と言います。)

B説とC説によると、白票は、定足数を判断するときには出席者扱いです。
したがって、上記の【事例】では、出席者8人なので、定足数は充足します。

このうちB説は、可決・否決を判断するときの分母から白票を引く、という考え方です。
この考え方によると、7人中4人が賛成したので、この議案は可決ですね。

これに対し、C説は、可決・否決を判断するときの分母から白票を引かず、賛成票にもカウントしない、という考え方です。
この考え方によると、8人中4人の賛成となり、過半数の賛成がないので、この議案は否決です。

個人的には、理事会の席にいて投票した以上、欠席扱いは不自然だと思っています。
また、理事会決議の可決要件は、原則として「出席者の過半数」です(改正法42条1項)。
「反対より賛成が多い」という要件ではありません。
白票は、少なくとも賛成ではないですから、「出席者の過半数」が賛成したかどうかを考える際には、反対と同じ扱いにせざるを得ません。
ということで、私はC説が妥当だと思っています。
一昨日の記事も、C説を前提に条文案を作りました。

A説、B説、C説のどれを採用するかは、それぞれのお好みです、
ただ、B説は、定足数の判断では出席としつつ、可決要件の判断では欠席と同じ扱いにするのが少々不自然なので、やめておいた方がいいと思います。

いちばんダメなのは、細則などで白票の取扱いを決めていなかったために、投票の後、可決か否決かわからなくなるパターンです。
A~Cのどれが妥当か、という議論以前に、そもそもルールが決まっていないと、どうしようもないです。
細則でも、理事会内の申合せでも何でもいいので、どのルールを採用するかは決めておきましょう。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]

理事会の決議要件(寄附行為施行細則)

本日は、理事会の決議要件を、寄附行為施行細則に定めてみます。

理事会決議については、普通決議、特別決議、特殊決議の3つに分けて、寄附行為作成例第20条に定められています。
長くなるので、第20条第1項だけ貼り付けておきます。

 (決議)
 第20条 理事会の決議は、法令及びこの寄附行為に別段の定めがある
  場合を除くほか、決議について特別の利害関係を有する理事を除く
  理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

別にこの条文だけでも不都合はないように思えますが、実際に理事会をやってみると、これどうするんだっけ? という場面が結構あります。
寄附行為施行細則で、ちょっとした疑問を解決しておくと、何かと安心ですね。

例えば、次のような条文を置いてみたらいいんじゃないかな、と思っています。

 (定足数の判断)
 第××条 理事会の定足数の充足は、議案ごとに、決議の時点で判断し
  なければならない。

 (決議の方法)
 第××条 理事会の決議は、口頭、挙手、投票のいずれかの方法で行う。
 2 口頭による決議は、議長から出席者に対し、異議がないか問う方法で
  行うことができる。
 3 投票による決議は、記名投票によって行う。

 (特別利害関係人の退席)
 第××条 決議について特別の利害関係を有する理事は、当該議案の
  審議を開始するときに、退席しなければならない。
 2 前項の規定にかかわらず、議案の説明を行わせる場合その他必要が
  あると認める場合には、決議を行う時まで、当該理事を会議に同席
  させることができる。

 (白票等の取扱い)
 第××条 投票の際に白票があった場合は、出席者に算入し、賛成票に
  算入しない。
 2 決議の際に退席又は棄権した者は、出席者に算入しない。


特に、白票の取扱いは、後々トラブルになることがあります。

きちんと決めておかないと、欠席扱いにすべきだ、賛成でも反対でもない票として数えるべきだ、など色々な意見が出てきて、可決・否決の判断ができなくなってしまいます。

上記の条文例では、投票した以上出席者にはカウントする(=定足数の算定で出席にカウントする)、賛成と書いていない以上賛成にはカウントしない(=実質的に反対票と同じ扱いになる)、というルールを採用しています。

もちろん、別のルールを採用しても構いません。
どのルールでもいいから、ルールが決まっていることが大事だということですね。


執筆:弁護士 小國隆輔

<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
記事検索