学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

私立学校法

議長のお仕事(評議員会ver.)

少し前に、理事会の議長のお仕事を寄附行為施行細則に定めました。
本日は、評議員会の議長について細則に定めてみようと思います。
理事会の議長とほとんど同じですが、細かいところでちょいちょい相違点があります。

あ、少し前の記事とやらはこちらです。↓
 議長のお仕事の詳細(寄附行為施行細則)

とりあえず、評議員会の議長について必要そうな条文を並べてみましょう。

 (議長の互選)
 第××条 寄附行為第46条による議長の互選は、挙手又は投票のほか、出席
  評議員が推薦し、他の出席評議員に異議がないことを問う方法によって行う。
 (議長の職務)
 第××条 議長は、評議員会を主宰し、その議事進行を行う。
 (開会及び閉会等)
 第××条 議長は、出席評議員(オンライン会議による出席者又は書面若しくは
  電磁的方法による出席者を含む。)の人数が、寄附行為第××条の定足数を
  充足していることを確認しなければならない。
 2 評議員会は、議長の開会宣言によって開始し、閉会宣言によって終了する。
 3 議長は、必要に応じ、評議員会の途中で休憩を設けることができる。
 (延期又は続行)
 第××条 評議員会の延期又は続行の決議をしたときは、議長は、延期又は続行後の
  会議の日時及び場所を議事録に記載しなければならない。
 (議案)
 第××条 評議員会の議題に対する議案は、理事が提出する。
 2 私立学校法75条第1項に基づいて評議員が議案を提出しようとする
  ときは、議長は、評議員総数の3分の1以上が共同して行っていることを
  確認し、議事録にその氏名を記載しなければならない。
   ※大臣所轄学校法人等においては、「3分の1」を「10分の1」にする
 3 議案の提出者は、議案の趣旨及び内容を説明しなければならない。この
  説明は、当該議案を担当する部署の職員に行わせることができる。
 (出席者の発言)
 第××条 評議員会の出席者が発言するときは、議長の許可を得なければならない。

だいたいこんなところですかね。。。
他に必要な条文があれば、ときどき加筆するかもしれません。


執筆:弁護士 小國隆輔

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★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊



実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04



実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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評議員会の招集(寄附行為施行細則)

本日は、評議員会の招集について、寄附行為施行細則に定めてみようと思います。

まず、寄附行為作成例42条を確認しておきます。
2項と3項は評議員による招集請求等の条文なので、本日は割愛です。

 (招集)
 第42条 評議員会は、法令に別段の定めがある場合を除き、理事会の
   決議に基づき理事長が招集する。
  2~3 略
  4 評議員会を招集する場合には、理事会において、次に掲げる
   事項を定め、評議員に対し、書面又は電磁的方法(評議員の承諾を
   得た場合に限る。)により通知しなければならない。
   一 会議の日時及び場所
   二 会議の目的である事項があるときは、当該事項
   三 会議の目的である事項に係る議案(当該目的である事項が議案と
    なるものを除く。)について、議案が確定しているときはその概要、
    議案が確定していないときはその旨
   四 私立学校法施行規則で定める事項
  5 前項の通知は、会議の1週間前までに発しなければならない。

理事会の招集の条文(作成例18条)と比べると、理事長が欠けたとき又は理事長に事故があるときの取扱いが定められていません。
このような場合に評議員会を開きたいのであれば、各理事が理事会を招集し、理事会で新しい理事長を選定して、新理事長が評議員会を招集することとなります。

評議員会の招集について寄附行為施行細則に定めるべき内容は、理事会の招集とあまり変わりません。
例えば、次のような条文を置いておけばよいのだろうと思います。

 (評議員会の招集)
  第××条 評議員会の招集は、次のいずれかの方法で通知するものとする。
   ただし、第2号及び第3号の方法は、当該評議員が書面又は情報通信技術を
   利用した方法で承諾した場合に限り用いることができる。
   (1) 文書を交付又は送付する方法
   (2) pdfファイルを電子メールで送信する方法
   (3) △△クラウドにアップロードしたpdfファイルを各理事が
     ダウンロードする方法
  2 前項第2号及び第3号のpdfファイルは、印刷できる設定にしなければ
   ならない。
  3 評議員は、第1項但書の承諾を、いつでも、書面又は情報通信技術を
   利用した方法によって撤回することができる。
  4 寄附行為第42条第5項の「会議の1週間前まで」とは、招集通知を発した
   日と会議の日の間に、7日以上あることをいうものとする。
  5 前各項の規定は、寄附行為第43条第1項又は第44条第1項に基づき、
   評議員又は監事が評議員会を招集する場合に準用する。

細かい話ばかりですが、理事会の招集と異なる点は、次のとおりです。
 ・評議員に対して電磁的方法で招集を通知するには、個別に承諾を得る
  ことが必要(第1項但書)
 ・評議員は、その承諾をいつでも撤回することができる(第3項)
 ・評議員又は監事が招集する場合のフォローが必要(第5項)

ちなみに、「情報通信技術を利用した方法」は、要するに電磁的方法と同じです。
法令用語に合わせて「情報通信技術を利用した方法」と記載しましたが、細則の表記は「電磁的方法」に統一しても構いません。

あとはお好みですが、評議員会の招集が理事会決議事項となったことに対応して、次のような条文を置いてもよいと思います。

 (評議員会の招集に係る理事会の決議)
  第××条 理事会決議によって評議員会の招集を決定した後、次の事項に
   変更があった場合、再度理事会で決議しなければならない。
   (1) 会議の日時及び場所
   (2) 会議の目的である事項
   (3) 会議の目的である事項に係る議案が確定していたときは、当該議案
   (4) 私立学校法施行規則第20条各号に定める事項

だいぶ長くなってきたので、本日の記事はここまでにしようと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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理事会の運営(寄附行為施行細則)

本日は、理事会の運営の諸々を、寄附行為施行細則に定めてみます。

理事会に関する寄附行為作成例の条文は、13条、14条、18条~22条あたりです。
※寄附行為作成例の全文は、こちらからどうぞ。↓
寄附行為作成例(文部科学大臣所轄学校法人向け)(令和6年3月5日大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)決定)

何をどのぐらい書くか、特に決まり事はありません。
理事会を担当する事務局で、必要と思うものを書いておきましょう。

議長に関する事項招集に関する事項決議要件に関する事項はこれまでの記事で書いたので、その他諸々の条文を考えてみました。


(オンライン会議)
第××条 理事又は監事がオンライン会議の方法で出席するときは、△△△△
 又は○○○○を用いるものとする。
2 オンライン会議で出席する者がいるときは、会議の開始時に、次の
 事項を確認しなければならない。
 (1) 当該出席者の所在場所
 (2) 出席者の画像と音声が即時に他の出席者に伝わり、互いに適時的確に
  意見を表明できる状態であること
※「△△△△又は○○○○」には、アプリケーション名を記入。

(書面又は電磁的方法による意思表示)
第××条 寄附行為第20条第4項の定めによって議決に加わる理事は、各議案に
 対する賛否を、書面又は電磁的方法によって、会議の開始前に理事会に通知
 しなければならない。

(傍聴)
第××条 理事会は、公開しない。ただし、議長が許可した者に限り、傍聴
 することができる。
2 前項但書の傍聴者は、議長の指示に従わなければならない。
3 議長は、いつでも、第1項但書の許可を取り消し、傍聴者を退席させる
 ことができる。

(同席)
第××条 理事会には、議案の説明その他必要があるときは、学園の職員、
 学外の有識者その他必要な者を同席させることができる。
2 前項の同席の可否は、議長が決するものとする。
3 議長は、いつでも、同席者を退席させることができる。


だいたいこんなところですかね…。
思いついたら、また条文を追加していこうと思います。


執筆:弁護士 小國隆輔

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白票の取扱い(補足)

一昨日の記事で、理事会決議の際の白票について少し言及しましたが、もう少し詳しく考えてみたいと思います。

一昨日の記事というのは、こいつです。↓
 理事会の決議要件(寄附行為施行細則)

わかりやすくするために、具体的な事例を作っておきましょう。

【事例】
・現任の理事総数・・・15人
・理事会に出席した理事の人数・・・8人
・投票の結果・・・賛成4、反対3、白票1

欠席者がちょっと多い気がしますが、気にせず元気にいきましょう。
この事例の理事会決議は、可決となるでしょうか、否決となるでしょうか。
それとも、そもそも決議自体が不成立となるでしょうか。

いくつかの考え方があり得ます。

◇A説:白票は、出席者にカウントしない。
◇B説:白票は、出席者にカウントするが、投票者にはカウントしない。
◇C説:白票は、出席者にカウントし、投票者にもカウントし、賛成票にはカウントしない。

A説は、定足数を判断するときに欠席者扱いするという考え方です。
上記の【事例】だと、出席者が7人となるので、定足数未達となります。
つまり、可決・否決の判断以前に、理事会決議自体が不成立です。
(法的には、理事会決議が不存在である、と言います。)

B説とC説によると、白票は、定足数を判断するときには出席者扱いです。
したがって、上記の【事例】では、出席者8人なので、定足数は充足します。

このうちB説は、可決・否決を判断するときの分母から白票を引く、という考え方です。
この考え方によると、7人中4人が賛成したので、この議案は可決ですね。

これに対し、C説は、可決・否決を判断するときの分母から白票を引かず、賛成票にもカウントしない、という考え方です。
この考え方によると、8人中4人の賛成となり、過半数の賛成がないので、この議案は否決です。

個人的には、理事会の席にいて投票した以上、欠席扱いは不自然だと思っています。
また、理事会決議の可決要件は、原則として「出席者の過半数」です(改正法42条1項)。
「反対より賛成が多い」という要件ではありません。
白票は、少なくとも賛成ではないですから、「出席者の過半数」が賛成したかどうかを考える際には、反対と同じ扱いにせざるを得ません。
ということで、私はC説が妥当だと思っています。
一昨日の記事も、C説を前提に条文案を作りました。

A説、B説、C説のどれを採用するかは、それぞれのお好みです、
ただ、B説は、定足数の判断では出席としつつ、可決要件の判断では欠席と同じ扱いにするのが少々不自然なので、やめておいた方がいいと思います。

いちばんダメなのは、細則などで白票の取扱いを決めていなかったために、投票の後、可決か否決かわからなくなるパターンです。
A~Cのどれが妥当か、という議論以前に、そもそもルールが決まっていないと、どうしようもないです。
細則でも、理事会内の申合せでも何でもいいので、どのルールを採用するかは決めておきましょう。


執筆:弁護士 小國隆輔

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理事会の決議要件(寄附行為施行細則)

本日は、理事会の決議要件を、寄附行為施行細則に定めてみます。

理事会決議については、普通決議、特別決議、特殊決議の3つに分けて、寄附行為作成例第20条に定められています。
長くなるので、第20条第1項だけ貼り付けておきます。

 (決議)
 第20条 理事会の決議は、法令及びこの寄附行為に別段の定めがある
  場合を除くほか、決議について特別の利害関係を有する理事を除く
  理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

別にこの条文だけでも不都合はないように思えますが、実際に理事会をやってみると、これどうするんだっけ? という場面が結構あります。
寄附行為施行細則で、ちょっとした疑問を解決しておくと、何かと安心ですね。

例えば、次のような条文を置いてみたらいいんじゃないかな、と思っています。

 (定足数の判断)
 第××条 理事会の定足数の充足は、議案ごとに、決議の時点で判断し
  なければならない。

 (決議の方法)
 第××条 理事会の決議は、口頭、挙手、投票のいずれかの方法で行う。
 2 口頭による決議は、議長から出席者に対し、異議がないか問う方法で
  行うことができる。
 3 投票による決議は、記名投票によって行う。

 (特別利害関係人の退席)
 第××条 決議について特別の利害関係を有する理事は、当該議案の
  審議を開始するときに、退席しなければならない。
 2 前項の規定にかかわらず、議案の説明を行わせる場合その他必要が
  あると認める場合には、決議を行う時まで、当該理事を会議に同席
  させることができる。

 (白票等の取扱い)
 第××条 投票の際に白票があった場合は、出席者に算入し、賛成票に
  算入しない。
 2 決議の際に退席又は棄権した者は、出席者に算入しない。


特に、白票の取扱いは、後々トラブルになることがあります。

きちんと決めておかないと、欠席扱いにすべきだ、賛成でも反対でもない票として数えるべきだ、など色々な意見が出てきて、可決・否決の判断ができなくなってしまいます。

上記の条文例では、投票した以上出席者にはカウントする(=定足数の算定で出席にカウントする)、賛成と書いていない以上賛成にはカウントしない(=実質的に反対票と同じ扱いになる)、というルールを採用しています。

もちろん、別のルールを採用しても構いません。
どのルールでもいいから、ルールが決まっていることが大事だということですね。


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理事会の招集通知(寄附行為施行細則)

本日からは、理事会の運営について、寄附行為施行細則で定めていこうと思います。

理事会に関する寄附行為作成例の条文は、13条、14条、18条~22条あたりです。
多いのでここには貼り付けないですが、皆さん見ておいてくださいね。
※寄附行為作成例の全文は、こちらからどうぞ。↓
寄附行為作成例(文部科学大臣所轄学校法人向け)(令和6年3月5日大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)決定)

繰り返しになりますが、寄附行為と同じ内容を細則に定める必要はありません。
寄附行為に書けない細かいことや、寄附行為を読んだだけではわからないことを、細則に書くのが基本的な作法です。

細則に何を書くかは自由ですが、例えばこんな感じで細則に定めればいいんじゃないかなー、という条文を並べていきます。
まず、招集に関する条文です。

 (招集)
  第××条 理事会の招集は、次のいずれかの方法で通知するものとする。
   (1) 文書を交付又は送付する方法
   (2) pdfファイルを電子メールで送信する方法
   (3) △△クラウドにアップロードしたpdfファイルを各理事が
     ダウンロードする方法
  2 前項第2号及び第3号のpdfファイルは、印刷できる設定にしなければ
   ならない。

ほとんどの学校法人の寄附行為では、理事会の招集を書面又は電磁的方法で通知する旨を定めています。
特に電磁的方法については、具体的に何をすればいいのかわからないので、細則で決めておくことがお勧めです。
上記の(2)、(3)と第2項は、電磁的方法の具体的な中身について、改正法&改正施行規則の定めに沿った内容です。
特に第2項は見落としがちなルールなので、細則に定めておくと安心ですね。

ちなみに、電磁的方法の一つとして、招集通知のデータを保存した媒体(CD-RとかUSBメモリとか)を交付又は送付する方法も可能とされています。
いやいや、そんなことするなら紙媒体を渡した方が楽でしょ…ということで、上記の条文では、この方法は採用しないことにしました。

あとはお好みですが、次のような条文を置いておくのもアリだと思います。

  3 寄附行為第18条第6項の「会議の1週間前まで」とは、招集通知を発した
   日と会議の日の間に、7日以上あることをいうものとする。

会社法の裁判例では、招集通知を発出する際の「X日前」とは、「中X日」と読みます。
たぶん、私立学校法も同じ解釈が採用されます。
つまり、「会議の1週間前」は、「中7日」と読むので、実質的には会議の8日前に招集通知を発送しなければなりません。
例えば、7月26日に理事会を開催したかったら、招集通知は、「7月19日まで」ではなく、「7月18日まで」に発送しなければなりません。
実務的に間違いを起こしやすい点なので、これも細則に書いておけば安心ですね。


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議長のお仕事の詳細(寄附行為施行細則)

本日から、寄附行為施行細則の条文案を作っていきたいと思います。

細則に何を定めるか、特に決まりはないのですが、次のような事項を定めることをお勧めしています。

・寄附行為を読むだけではわからない、手続きの詳細
  例:理事会の議長は何をすればいいのか
  例:評議員以外で、評議員会に同席できるのは誰か
・寄附行為に書かれた抽象的な用語の具体化
  例:理事会決議が必要な「多額の借財」は、いくら以上か
  例:電磁的方法としてどのようなものを用いるか
・寄附行為に従った事務処理を、どの部署が担当するか
  例:理事会議事録の作成・保管は、理事長室が担当する
  例:計算書類等の作成・保管は、経理部が担当する

前回の記事に書いた通り、寄附行為の条文をコピペすることは、基本的にNGです。
コピペすることが法律違反とは言いませんが、あまり意味がありません。
 ※前回の記事はこちらからどうぞ。↓
  寄附行為施行細則に何を書こう

ということで、まずは理事会の議長に関する条文を考えてみます。

次のとおり、寄附行為作成例の理事会の条文では、議長の決め方しか定められておらず、議長が何をすればいいのかわかりません。

 (運営)
 第19条 理事会に議長を置き、理事長をもって充てる。
 2 前条第2項及び第4項並びに第29条第2項の規定に基づき理事会を招集
  した場合における理事会の議長は、出席理事の互選によって定める。

寄附行為施行細則に、議長のお仕事を定めておけば、議事進行がスムーズにいきそうですね。
例えば、次のような条文を細則に置いてみてはいかがでしょうか。

 (議長の互選)
 第××条 寄附行為第19条第2項による議長の互選は、挙手又は投票のほか、
  出席理事が推薦し、他の出席理事に異議がないことを問う方法によって行う。
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なお、この記事では「寄附行為施行細則」という名称にしていますが、「寄附行為施行規則」「理事会会議規則」など、学内で使いやすい名称を採用してください。
寄附行為の下位規程であることがわかれば、名称は何でもいいということですね。

こんな感じで、細則の条文をぽちぽちと作っていこうと思います。

冊子にまとめたら売れますかね…?


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寄附行為施行細則に何を書こう

寄附行為変更の作業が一段落した学校法人の方から、「寄附行為施行細則って、何を書いたらいい?」「そもそも必要?」といったご相談を受けることが増えてきました。

法的な正解は簡単で、「何を書くかは自由」「必要なら作ればいいし、必要なければ作らなくてもいい」です。

学校法人の実務でよく見るのは、寄附行為に書いていることと同じ内容を、寄附行為施行細則にも書くパターンです。
例えば、「理事会は、理事長が招集する」とか、「計算書類等は理事会の承認を得なければならない」とかですね。

これ、意味ないです。
というか、百害あって一利なし、と思っています。

寄附行為と細則に同じ内容を書くと、今後寄附行為の変更をする際に、細則の変更も必要になり、作業量が増えます。
日常の業務でも、寄附行為と細則の両方を毎回見ないといけないので、無駄な作業が増えます。
さらに、何かのミスで寄附行為と細則の内容にズレが生じると、どちらに従えばいいのかわからなくなり、とても困ります。

中には、細則に次のような条文があれば便利じゃないか、というご意見もあるようです。

 第〇条 次の事項は、理事会の決議によって決定しなければならない。
 (1) 理事長、代表業務執行理事及び業務執行理事の選定及び解職
 (2) 重要な資産の処分及び譲受け
 (3) 多額の借財
 (4) 以下略

要するに、私学法や寄附行為のあちこちに散らばっている理事会決議事項を、細則にまとめておけば便利だ! ということですね。
でも、これを細則に定めると、両方見ないといけないとかズレが生じたらどうするんだとか、上記の不都合がまともに生じてしまいます。
一覧表があった方が便利だというのなら、事務局のマニュアルなどに一覧表を付けておけば済むので、わざわざ細則に定める必要はありません。

ということで、次回以降、ときどきお休みもしつつ、寄附行為施行細則や、それ以外の附属規程について、ぼちぼちと考えていこうと思います。


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補欠として選任された理事の任期

相変わらず寄附行為変更のご相談をたくさんお受けしているのですが、細部のツメに入ると、細かい疑問点が出てきますよね。

ときどきあるのが、「補欠として選任された理事」の任期です。

まず、改正法の条文を貼っておきましょう。第32条3項ですね。

(理事の任期)
 第32条
 3 第1項の規定は、寄附行為をもつて、任期の満了前に退任した
  理事の補欠として選任された理事の任期を当該退任した理事の
  任期の満了する時までとすることを妨げない。

「補欠として選任された理事」とは、前任者が任期途中で退任したときの後任者を指します。
改正法30条3項によってあらかじめ選任されていた「補欠の理事」だけでなく、単に前任者が任期途中で退任しただけの場合も含みます。

寄附行為に何も定めていなければ、このような後任者の任期は、前任者の任期を引き継ぐのではなく、自分自身の任期をゼロから数え始めます。
そうすると、任期途中の退任者が出るたびに理事の任期満了がバラバラになっていくので、任期の管理がちょっと面倒です。

そこで、補欠として選任された理事については、前任者の残任期を引き継がせれば、理事の任期満了がバラバラになりません。
どちらかというと、改正法32条3項に対応した寄附行為の条文を置き、理事の任期バラバラ事件が起きないようにする学校法人が多数派のようです。

では、寄附行為作成例の条文を見てみましょう。
第10条1項ですね。

 (理事の任期)
 第10条 理事の任期は、選任後4年以内に終了する会計年度のうち
  最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、
  任期の満了前に退任した理事の補欠として選任された理事の任期は、
  前任者の残任期間とすることができる。

但書が、改正法32条3項に対応する条文です。
この但書を置くことで、「補欠として選任された理事」については、①前任者の残任期を引き継ぐことも、②自分自身の任期を新たに設定することもできるようになります。

末尾の「することができる」を「する」に修正したらどうなりますか? というご質問をいただくこともあります。
素直に読めば、補欠として選任された理事の任期は、必ず前任者の残任期を引き継ぐ、という条文になるのでしょう。①の選択肢しかないということですね。
ただ、「する」に修正した条文の場合でも、“補欠ではなく、新たに選任した理事だ!” と言えば、新たな任期を設定できるような気がしなくもないです。この辺はよくわかりません。

そもそも、改正法32条3項の文言からは、後任の理事選任時に任意に①と②を選択できるような制度設計を許容しているのか、明確に読み取ることはできません。
個人的には、寄附行為が理事選任機関に与えた権限を超えるものではない(=寄附行為が定めたものより長い任期を設定する権限を与えるものではない)ので、寄附行為作成例のように「することができる」という定め方をすることで、理事選任機関が任意に①と②を選択できる、という結論でよいと思っています。


今日は細かい話でしたね…
要するに、寄附行為作成例10条1項と同じ条文を採用しておけば、とりあえず不便はないと言いたかったわけです。


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理事会を理事選任機関にしてもいいらしい(文科省説明資料)

本日も、7月8日付で更新された文科省説明資料を、ぽちぽちと読み込んでいます。
(そこ、暇人とか言わない)

説明資料の掲載場所はこちらです。↓
 ◎私立学校法の改正について(令和5年改正)

さて、本日気になるのは、p87のQA2です。
とりあえず貼り付けましょう。

 Q2:理事選任機関を理事会としたり、理事を学内選挙により選任したりする
 ことは可能か。【令和6年7月8日更新】
 A2:理事会を理事選任機関とすることも違法とは解されないことから可能
 です。ただし、Q1や今回の制度改正の趣旨を踏まえて適切に判断いただき
 たいと思います。
 また、理事の事実上の選任を学内選挙によることも可能ですが、解任する場合
 の責任主体が不明確になることがないよう、選挙結果を踏まえて理事選任機関
 である評議員会が選任するといった方法や、選挙の実施を含む選任に責任を
 持つ理事選任機関(名称としては、例えば理事選挙委員会などとすることも
 考えられます。)を置くなどの工夫が考えられます。

 Q2:理事選任機関を理事会としたり、理事を学内選挙により選任したりする
 ことは可能か。【令和6年7月8日更新】
 A2:理事会を理事選任機関とすることも違法とは解されないことから可能
 です。

大事なことだから、2回言いました。
これまで、文科省が公表する資料では、理事会を理事選任機関にしていいか?という問いに正面から答えるものはありませんでした。
解説動画などでも、改正法の趣旨を踏まえて適切にご判断を…というだけで、やっぱり正面から答えてはいただけませんでした。

個人的には、あちこちのセミナーや某書籍で、理事会を理事選任機関にすることも可能であると説明してきたので、ようやく文科省の説明資料にも書いてくれた、という感じです。
ちなみに、理事会を理事選任機関にする場合の留意点やメリット・デメリットは、某書籍のp76、p109、p502などに記載しています(宣伝)。

ところで、大臣所轄学校法人の寄附行為変更の認可申請の第1期受付は7月1日から始まって、7月8日に終わってます。
こんな大事なことを、認可申請の受付期間が終わってから言うなんて、ちょっとずるくないですか?


執筆:弁護士 小國隆輔


<以下宣伝>

★実務 私立学校法★
著者:小國隆輔/著 定価8,800円税込
判型:A5判 ページ数:720頁
発刊年月:2024年5月刊


実務 私立学校法
小國隆輔
日本加除出版
2024-06-04


実務 私立学校法 [ 小國隆輔 ]
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事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
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