学校法務の研究室

弁護士法人小國法律事務所の公式ブログです。
労働法、私立学校法、学校教育法の話題をつぶやいています。

その他

夏期休業のお知らせ

毎日毎日毎日毎日暑いですね。
弊所では、8月9日(金)~8月18日(日)を夏期休業としております。

このブログは、休業中にすごく暇だったら更新するかもしれないですが、弁護士業務は一応お休みです。

海か山かテーマパークに行きたいところですが、こう暑いと、自宅に引きこもるのが一番贅沢な過ごし方かもしれないですね。

皆様、良いお盆休みをお過ごしください。


執筆:弁護士 小國隆輔

年末年始の営業について

師走も後半になりました。
最近では、冬休みを長めに設定する方も多いようですね。

弊所では、本日が仕事納めで、年明けは1月9日から営業します。

ちょっと長めの冬休みですが、個人的には、ため込んだ原稿をここで消化しないと大変なことになるので、既に焦り始めていたりします。。

当ブログをご覧いただいている皆様も、どうぞ良い年をお迎えください。

当ブログの運営について

ブログに記事を掲載し始めてから1年余りとなりました。
当初は、「これ、誰が見てるんだ?」という状態から始まりましたが、お陰様で、日々たくさんの方にご覧いただいています。

ところで、ブログのコメント欄を通じて、法律問題についてのご意見・ご質問をいただくことがございます。

ブログの運営を含め、当事務所は、クライアントの皆様から頂く顧問料等の報酬に支えられて、人事・労務、教育法務などの専門性を維持しています。
当事務所では無料相談は原則として行っていないため、ブログのコメント欄にご質問等をいただいた場合も、個別の回答には対応しておりません。

私学法改正への対応に限らず、具体的なご相談・ご依頼がある場合には、当事務所ウェブサイトのお問い合わせフォームか、お電話等でご予約いただきますようお願いいたします。

無料相談をやっている法律事務所もたくさんあるじゃないか、というご指摘があるかもしれませんが、所定の費用をご負担いただいているクライアントの方とバランスを欠くことにもなりますので、ご了承くださいますようお願い申し上げます。


執筆:弁護士 小國隆輔

裁判所がお休みになったら

サッカーワールドカップ、昨日の日本対ドイツは見ごたえのある試合でしたね。
サウジアラビアでは、初戦でアルゼンチンに勝ったということで、王様の一声で、試合翌日は国を挙げて休日になったとか何とか。
日本も休日にならんかなぁ…と思ったのは私だけではないはずですよね。

ということで、学校法務とは何の関係もないですが、日本の偉いさんの一声で休日になったら、裁判所と弁護士がどうなるのか、脳内シミュレーションをしてみました。

まず、その日に入っていた裁判期日はどうなるでしょう。
休日になったら裁判期日を開けないので、期日変更をする必要があります。

民事訴訟法と刑事訴訟法の条文を引いてみましょう。
まずは民事訴訟93条です。


(期日の指定及び変更)
第93条 期日は、申立てにより又は職権で、裁判長が指定する。
2 略
3 口頭弁論及び弁論準備手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。ただし、最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す。
4 略
(期日の呼出し)
第94条 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 略


偉いさんの一声が「顕著な事由」だと解すれば、いきなり休日になっても、期日変更はできそうですね(93条3項)。

ただ、期日の呼出しをどうやってやるのか、謎です。
予定されていた期日の時刻までに、裁判所が期日変更の決定をして、裁判所から弁護士に期日変更の通知をしないといけないので(94条1項)、民事裁判を担当する裁判官と書記官は、偉いさんの一声では休むことができなさそうです。

では、刑事裁判はどうでしょう。
刑事訴訟法276条を見てみましょう。


第276条 裁判所は、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公判期日を変更することができる。
2 公判期日を変更するには、裁判所の規則の定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
3 略

どうやら、裁判所が職権で期日変更をすることができるようです。
事前に、検察官と、被告人or弁護人の意見を聴かなければならないのですが、「急速を要する場合」には意見聴取を省略できます。
たぶん、偉いさんの一声は「急速を要する場合」に当たりますから、検察官と弁護士はお休みにしても大丈夫そうですね。

ただ、急速を要しても、裁判所の期日変更の判断を省略することはできません。
ということで、刑事裁判を担当する裁判官と書記官も、偉いさんの一声では休むことができなさそうです。

まあ、弁護士の方も、打合せ予定が入っていたクライアントなどに、「偉いさんの一声に従って今日はお休みにします」と連絡せんといかんので、結局出勤する破目になるんでしょうね。
仕事中心の考え方はよろしくないと思うのですが、ほとんどの職場は同じようなものでしょう。

日本人は勤勉だなぁ…と思いつつ、もうちょっと大らかでもいいような気もします。


執筆:弁護士 小國隆輔

部活動顧問と甲子園

夏の甲子園、今年は東北地方初の優勝ということで大きな話題になっています。
ネット記事などを見ていると、高校野球の監督の給料はいくらか…といった無粋な記事も結構あるようですね。
今日は、「高校野球の監督の契約はどんな契約か」という、もっと無粋な話を考えてみようと思います。
もう少し広げると、「部活動の顧問はどんな契約か」という議論ですね。


公立と私立で異なるのですが、大きく分けると、次のような契約や任用の形がありえます。

【公立】
1-1 教諭(一般職の職員)が、部活動顧問として、監督になる
1-2 教諭が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
2-1 部活動指導員(非常勤職員など)が、部活動顧問として、監督になる
2-2 部活動指導員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる

【私立】
3-1 専任教職員が、部活動顧問として、監督になる
3-2 専任教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
4-1 非専任の教職員が、部活動顧問として、監督になる
4-2 非専任の教職員が、部活動顧問じゃないけど、監督になる
5-1 業務委託契約で、部活動顧問兼監督業務を委託する
5-2 業務委託契約で、監督業務を委託する

・・・実にややこしいですね。
上記以外にも、いろいろな契約や任用の形があるかもしれません。

ポイントは、
 ①学校の職員としての地位があるか
  →公立なら職員として任用しているか
   私立なら雇用契約を締結しているか
 ②部活動顧問に任命しているか
の2つだろうと思います。

①の法律関係は、わりとシンプルです。
職員の地位があれば、地方公務員法や労働基準法などが適用されます。
要件を満たせば社会保険に入れるし、仕事中にケガをしたら、公務災害や労働災害として治療費等の補償を受けることができます。
また、校長等の指揮監督を受けて職務に従事することも、明確です。
これに対し、職員の地位がない場合、例えば業務委託の場合などは、業務内容・委託期間・報酬の計算式・傷病の取扱いなどを、契約書等で具体的に定めておく必要があります。

②は、実は法的にはよくわからない議論です。
学校教育法等は部活動顧問に全く言及していないので、そもそも「顧問」が何なのか、法的根拠は曖昧です。
実務的にも、必ずしも「顧問=監督」ではなく、複数の教職員が顧問と監督を分担していることは珍しくありません。
部活動の時間が労働時間かどうか定説がないことから、顧問の役割をはっきりさせにくいのが実情なのかもしれません。


ところで、平成29年4月1日の学校教育法施行規則改正で、「部活動指導員」という謎の概念が導入されました。
スポーツ庁の通知(平成29年3月14日付28ス庁第704号)では、学校職員の地位を持つことが前提のようにも見えますが、これ以外の契約(業務委託契約など)が排除されているのか、必ずしも明確ではありません。

部活動指導員の制度化は、部活動顧問の負担軽減が目的の一つといえます。
ただ、上記のスポーツ庁通知では、部活動指導員に顧問を任せる場合は、別途「当該部活動を担当する教諭等」を指定せよとも言っています。
えっと、それでは負担軽減にならないような……
また、多くの競技団体では、大会等の引率は教員が行うよう求めているので、この辺の整合性はどうなんだ? という気もします。


ここまで疑問ばかり書き散らかしてきましたが、私自身も、中学校から大学まで、どっぷり部活動をしていました。
部活動が学生・生徒の成長にとって有意義であることは疑いようがないですから、部活動顧問の法的地位を曖昧にしておくことが良いとは思えません。
学校教育法施行規則に「部活動指導員」を書き加えてお茶を濁すのではなく、顧問の職務を明確にするような改正をしてほしいものです(もっと言えば、設備費や人件費を賄えるだけの予算をつけてほしいものです)。


執筆:弁護士 小國隆輔

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警報と臨時休業

昨晩から今朝にかけて、山形県と新潟県に大雨特別警報が発令されました。
大きな被害が出ないことを祈るばかりです。

さて、自然災害が発生したときや、そのおそれがあるときは、休校になることがあります。
意外と知られていないのですが、どのような場合に休校にするのか、法令では決まっていません。

自然災害による休校の根拠条文は、学校教育法施行規則63条です。小学校に関する条文ですが、中学校、高等学校等にも準用されています。
条文を確認してみましょう。

第63条 非常変災その他急迫の事情があるときは、校長は、臨時に授業を行わないことができる。この場合において、公立小学校についてはこの旨を当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会(公立大学法人の設置する小学校にあつては、当該公立大学法人の理事長)に報告しなければならない。


「非常変災その他急迫の事情」ですので、休校になるのは自然災害に限られません。
例えば、学校の敷地内で不発弾が見つかったとか、学校の近くで重大な犯罪が発生した場合などが、「その他急迫の事情」に当たります。

学校教育法施行規則63条は、「非常変災」の内容に言及していないので、どのような災害であれば休校にするのか、具体的な判断は個々の学校に任せる趣旨と考えられます。

学校によっては、どのような災害であれば休校にするのか、学則や内規等で決めていることもあります。
よく見かけるのは、暴風警報又は各種特別警報が出た場合に休校とする、というものです。
時折、暴風警報のみを対象とする学則等を見かけますが、少なくとも特別警報は加筆しておくべきでしょう。

注意したいのは、学校教育法施行規則63条は、校長の裁量で休校を決めることを想定している点です。
学則等に書いていない事情(暴風警報以外の警報、不発弾処理、不審者の校内侵入など)であっても、児童・生徒の安全にかかわる事態が発生した場合には、校長の判断で休校にすることができます。
学則等の文字に縛られて、児童・生徒の安全にかかわる判断が遅れないようにしたいものです。


なお、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの感染症を理由にした休校は、学校教育法施行規則ではなく、学校保健安全法20条に基づいて行います。
(この辺の話は、拙著『新型コロナの学校法務』で整理しています。)
新型コロナの学校法務
小國 隆輔
中央経済社
2021-07-20



ということで、学校保健安全法の条文を見ておきましょう。

(臨時休業)
第20条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。

校長ではなく、「学校の設置者」が休校等の判断をすることとされています。
私立学校なら学校法人、国立学校なら国立大学法人、公立学校なら教育委員会又は公立大学法人が、判断権者ということですね。

実際には、校長の判断に委ねていることが多いと思いますが、感染症を理由とした休校を誰が決めることになっているのか、一度確認しておくとよいでしょう。


執筆:弁護士 小國隆輔

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事務所紹介
名称    :弁護士法人小國法律事務所
事務所HP:http://www.oguni-law.jp/
大阪弁護士会所属
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